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鳩のなかの猫-アガサ・クリスティー 感想

3.5
鳩のなかの猫 アガサ・クリスティー

概要とあらすじ

1959年のポアロ長編33作中28作目。

ラマット国のアリー・ユースフ殿下が持つ七十五万ポンドにもなる宝石が、革命の混乱の中で消失してしまった。一方イギリスの名門メドウバンク校には、アリーの従妹のシャイスタや、アリーの友人ボッブの姪であるジェニファが入学することになったが、そこで新任の体育教師が射殺され…という話。

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みどころ

ポアロがなかなか登場しません。全体の四分の三を過ぎたあたりでようやく登場します。その分、「待ってました」感がありましたね。

ポアロが登場するまでも、特に退屈することなく読むことができました。

ものすごく盛り上がる場面はそれほどありませんが、全体的に一定のテンションで楽しく読むことができたなぁ、という印象です。ところどころに人生の教訓めいた言葉が挟まれていて、なかなか興味深く読み進めることができます。アガサ・クリスティーの教養の深さが感じられます。

ジュリアがラケットの謎を解き明かし、ポアロに相談に行くくだりや、女性たちが宝石に目を輝かせる描写が面白いです。

またジュリアやジェニファの親子関係の描写も、興味深く読むことができました。自我の芽生えが見られる年ごろの、親に対する愛情と疎ましさに揺れる感じが、それぞれうまく描かれていたように思います。

登場人物について

登場人物は多いですが、それなりに筆は尽くされていると思います。最初はよくわかりませんが、徐々に区別がつくようになります。

とはいえ、ジュリアとジェニファの名前被りはどうなんでしょう。もう少しわかりやすくしてくれてもよさそうなものなのに。二人のやり取りはとてもかわいらしいです。なかなかほっこりさせられます。

犯人とトリックについて

犯人が仕掛けたトリックは、ほとんどありません。しいて言えば、三つ目の殺害方法がそれでしょう。それによって私は完全に騙されていましたので、それはそれで成功なのでしょう。ですが、それによって驚きがあるかどうかは…

ラマット国の宝石と、メドウバンク校での殺人がどう絡むのかが、謎の一つでしたが、それはうまくいっていたように思います。隙がなく丁寧に組み立てられた話でした。

感想

登場人物たちに品があって、みんなあまりバタバタしていません。「トミー&タペンス」とか「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」みたいなのも楽しいですが、それを抑えた感じの今作もそれはそれでよかったように感じます。

ポアロが犯人を指摘して終わりと思わせてから、さらにもう一つの指摘を行ったり、真相がわかると、三つの殺人事件の見え方が一方向ではないことがわかったりと、凝った作りになっています。

他の作品にあるような、伏線が大胆に仕込まれているようなことはなく、その点ではあまり驚きはあるという作品ではありません。ポアロの的外れな指摘が、後で真相にかかわってくるといういつものパターンも、今作はあまり感じられません。

ですが話の筋としては、全てきれいに落ち着くところに落ち着いたという感じです。取っ散らかりそうな内容を丁寧にまとめた良作だと思いました。

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