概要
1941年のポアロ長編33作中20作目。
英南西部デボン州の沖合に位置する「バー島」が、「白昼の悪魔」の舞台であるスマグラーズ島のモデルであったようです。本編のスマグラーズ島と同様に、バー島も干潮時は陸地でつながっていますが、満潮時は海に囲まれ孤島になってしまいます。またこのバー島は、「そして誰もいなくなった」の舞台でもあるようです。
第二次世界大戦中の作品ですが、戦争の影を感じさせないような、ある意味からっとした作品です。ドイツ軍の侵攻におびえる読者たちの、気晴らしになったのではないでしょうか。
個人的評価
あらすじ
ジョリー・ロジャー・ホテルにバカンスでやってきた、ポアロを含め様々な人たち。そんな中で元女優のアリーナ・マーシャルが殺される。犯人は夫か? 愛人か? あるいはホテルの滞在者の中にいる、だれかなのだろうか…
登場人物
- オーデル・C・ガードナー(ホテルの滞在者・アメリカ人)
- ガードナー夫人(ホテルの滞在者・オーデルの妻)
- バリー少佐(ホテルの滞在者)
- スチーブン・レーン(ホテルの滞在者・元牧師)
- エミリー・ブルースター(ホテルの滞在者・スポーツマンタイプの女性)
- ロザモンド・ダーンリー(ホテルの滞在者・実業家)
- ケネス・マーシャル(ホテルの滞在者・実業家)
- アリーナ・マーシャル(ホテルの滞在者・元女優・ケネスの後妻)
- リンダ・マーシャル(ホテルの滞在者・ケネスと前妻の娘)
- パトリック・レッドファン(ホテルの滞在者)
- クリスチン・レッドファン(ホテルの滞在者・パトリックの妻)
- ホレス・ブラット(ホテルの滞在者)
- ミセス・カースル(ホテルの経営者)
- グラディス・ナラコット(ルーム・メイド)
- ニーズドン(医師)
登場人物たちがそれぞれ魅力的です。なんといっても、ガードナー夫妻。おしゃべりなガードナー夫人と、「そのとおり」としか相槌をうたないガードナー氏が面白い。寡黙なガードナー氏ですが、少しだけ活躍の場があるのもよかったです。
インドの話ばかりするバリー少佐も面白いです。話が長いので、みんなは聞きたがらないんですけれど、実は彼の話はそれなりに的を射ているんですよね。
他作品とのつながり
例のエジプトでの事件、リネット・リッジウェイが殺されたという。
これは「ナイルに死す」の話ですね。
面白かったところ
解決編でポアロが「会話がリアルじゃない」ので、怪しいと思った、というのが面白かったです。もちろん小説なので、会話が説明口調になったり、演劇調になったりするのは当たり前です。その小説としての不自然さを逆手に取った感じですね。
トリックについて
犯人側の作為がいろいろありましたが、危ういものが多かったように感じます。
綿密な時間計算、タイミングのかけひきは天才的、とポアロは言いますが、あんなの一歩間違えれば、すぐにアウトでしょう。返事を渋られたり、探し物をしたり、自然環境のちょっとした変化などで、くるってきませんかね。まぁ、作り話だからと言えばそうですけれど。
時間に関しては、少し顔を上げて確認されれば、アリバイがダメになります。ポアロが「それは大した問題じゃない」といっていますが、そんなことはありません。むしろ時間はこのトリックの根本です。
ただ、時間の作為に関しては、もっといいタイミングがありました。わざわざあのタイミングでする必要はないよなぁ、と思いました。
砂浜での偽装も、普通なら気になって覗こうとしてしまいますよね。確かに覗きづらい場所ですが、それでもどういう状況なのか知りたいと思うはずです。「隠れていろ」と言われていても、それを守るかどうかはその人次第です。
だからこその、アリーナのノータリン設定なのでしょうけれど、それならそれで、もう少し純粋無垢で、人の言うことを何でも信じてしまう感じを描写しておく方が、よかったのではないかと思います。
感想
なんかアリーナが報われないんですよね。最終的にめでたしめでたしみたいな感じになっていますが、アリーナの名誉回復があってもよかったのでは。そうすることで被害者に対する悲しみなんかがあって、より深みが増すと思うんですけれどね。
色々文句は言いましたが、まぁまぁ面白かったです。「ナイルに死す」に似た雰囲気がありますが、それよりは全体的に小粒な感じです。「ナイルに死す」は冗長なので、こちらの方がまとまっていていい、という人もいるかもしれません。その辺は好みかもしれませんね。
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