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【感想】「動く指」-シンデレラストーリー⁉ クリスティーお気に入り作品のひとつ

3.0
動く指 アガサ・クリスティー

概要

1943年のミス・マープル長編12作中3作目です。クリスティー自身がお気に入りと言っている作品のひとつです。彼女はこの作品を「人物描写と雰囲気のバランスが良い」と評価していたとされ、特に主人公ジェリーの語り口や、田舎町リムストックの空気感を気に入っていたと言われます。

第二次世界大戦中、クリスティーはロンドンの空襲や社会不安の中で執筆しており、「田舎の静けさ」「人間関係の細やかな観察」が強調されるのは、この時期の心情が反映されていると考えられています。

あらすじ

戦時中の事故で負傷したジェリー・バートンは、静養のため妹ジョアナとともに小さな町リムストックへ移り住む。穏やかで退屈に思えたこの町で、二人はすぐに奇妙な出来事に巻き込まれる。差出人不明の中傷めいた手紙が、住民たちの家に次々と届き始めたのだ。

内容は根拠のない噂や下品な中傷ばかりだが、町の人々は疑心暗鬼に陥り、空気は一気に不穏になる。やがて、手紙を受け取ったある女性が突然の死を遂げ、ただの悪質ないたずらと思われていた出来事が、取り返しのつかない悲劇へと変わってしまう…

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個人的評価

みどころ

読後感はさわやかです。いろいろなことが全て上手くいき、めでたしめでたしという感じです。

クリスティー作品ではおなじみですが、この作品でもカップリングが成立します。いつも作品なら唐突に成立しがちですが、「動く指」ではそのカップリングに多めに筆が尽くされています。シンデレラストーリー的な話ですので、そういうのが好きな人はいいかも。

登場人物について

  • ジェーン・マープル(独身の老婦人)
  • ジェリー・バートン(傷痍軍人)
  • ジョアナ・バートン(ジェリーの妹)
  • ディック・シミントン(弁護士)
  • モナ・シミントン(ディックの妻)
  • ミーガン・ハンター(モナの先夫の娘)
  • エルジー・ホーランド(シミントン家の家庭教師)
  • アグネス・ウォデル(シミントン家のお手伝い)
  • ローズ(シミントン家のコック)
  • オーエン・グリフィス(医師)
  • エメ・グリフィス(オーエンの妹)
  • エミリー・バートン(リトル・ファーズ邸の持主)
  • パトリッジ(リトル・ファーズ邸のお手伝い)
  • デイン・カルスロップ夫人(牧師の妻)
  • ナッシュ(郡警察の警視)

登場人物のキャラは、ちょっとぶれている感じがしました。一番キャラが立っていると思われるミーガンでさえ、もう一歩足りない感じがします。

原因は、ジェリーが最初からミーガンに対して、好意的な見方をしていたからです。これが最初は町の人たちと同じような見方をしていたのに、徐々に、あるいは何かのきっかけで印象が変わったみたいな話があれば、もっと深みが出たように感じます。

シェークスピアのやり取りがそれといえばそうかもしれませんが、それにしても序盤も序盤のやり取りなので、それをもっと中盤に持ってきたほうがよかったのでは? そしてその前段階では、変な女の子がいるなぁ、といった偏見の目で見ていた描写があれば、その後の展開ももっと意外性をもって読み進められたと思います。

そのため電車でロンドンにミーガンを連れていくシーンなんかは、意外性というより、唐突な感じがしてやや興ざめのような感じも受けました。

家庭教師のエルジーについては、見た目は美しいけれど、しゃべるといまいちという設定でした。なんでそんな余計な設定を付け加えたのだろう。素直に美しい人だけで良かったのではないでしょうか。その余計な設定のせいで、ジェリーの心の動きの振れ幅が少なくなってしまったとも言えます。

妹のジョアナも面白そうなキャラをしているように感じましたが、あまりそれが表に出てこないような、内弁慶的な感じを受けます。もっと村の人たちと遣り合ったら面白そうなのに、割とおとなしいんですよね。

トリックと犯人について

犯人は意外な人物でした。そして犯人がわかると同時に、的を外した中傷の手紙の謎が解けるというのも、なかなか気持ちのいい展開です。

そしてこれは推理小説です。殺人が起こり、犯人がいます。もしかするとそのシンデレラ自身が犯人かもしれない、という疑惑もあります。その意味でも大きく感情を揺さぶられるかもしれません。

トリックに関しては判明した直後は、そんなことかぁ、という感じでしたが、後々思い返すと、煙幕を払うと単純な事件が浮かび上がるという仕掛けは、なかなかに鮮やかだと感じました。

感想

登場人物たちにいまいち思い入れを持つことができませんでした。本来なら盛り上がるべき「ロンドン行き」の場面ですら、正直読んでいる最中、なんかつまらないなぁ、と思いながら読んでいました。

その反面、意外な犯人やトリックは良かったです。推理小説だから、そこが良ければいいんじゃないかとも思いますが、クリスティー作品に関しては物語も期待してしまうんですよね。

登場人物たちに思い入れを持つことができなかったため、個人的な評価は若干低めです。

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