概要とあらすじ
1931年のノンシリーズです。
シタフォード村の山荘で降霊会を行ったところ、ふもとの村の大佐の殺害が予言された。駆けつけると確かに大佐は撲殺されていた…という話。
登場人物について
エミリーとエンダビーの関係性が面白い。またジェイムスのねじが一本抜けている感じも面白く、その彼に対するエミリーの態度や言動がいいです。言っている内容は厳しいですが、その奥に深い愛情を感じます。この三人の登場人物が出てくる別の作品も読みたいと思わせられます。
一応話としてはしっかり完結しましたので、続編はありませんが、やりようによってはシリーズものとしてできないこともないと思います。しかし、そういったおいしいキャラであっても、あっさり使い捨てるのがクリスティの潔さですかね。
それに対して、シタフォードに住むことになったウィリット夫人は、もっと面白そうな人物として描けたのではないかと思います。思ったより出番が少なくて残念です。
探偵が途中で交代するというか、メインの探偵がある段階で急に表に出てくる感じが、少し驚かされました。その時点で三分の一ほど話が進んでいます。
トリックについて
トリックとしては小粒ですが、逆にそれでいい感じです。確かにそういう手もあったなぁ、と思わせられます。しっかり読んでいれば、それにつながるような伏線もしっかり描かれてありました。
それに対して犯行がばれる経緯が、少し甘いと思います。下手な作為をして、それによって犯行がばれてしまいます。むしろ犯人は余計なことをせず、そのままにしておいて欲しかった。そしてちょっとした違和感に気づき、犯行が明らかになるという感じの方がよかったのでは。
犯人について
犯人に関しては、こいつが怪しいという人物が現れます。ですが、クリスティーのことですから、どこかでひっくり返されるのではないかという疑念もあります。そして結果として、あぁ、そっちね、という感じ。
「アクロイド殺し」をはじめ、あらゆるパターンの犯人を描いてきたからこそ、どういう犯人でも意外性を持たせられるというのは、クリスティならではの利点でしょう。
感想
霊の話があるので、おどろおどろしいかと思わせておいて、思いのほか軽い読み口のミステリーでした。
エミリーとエンダビー、そしてジェイムスの三人の関係性がいいです。エミリーとエンダビーは、トミー&タペンスと同じような関係ですが、そこにジェイムスが絡んでくるので、より一層楽しいです。
推理小説としても面白く読むことができました。なかなかの良作だと思います。
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