概要
1926年のポアロ長編、33作中3作目。
ボドリー・ヘッド社からウィリアム・コリンズ社へと契約が変わってからの最初の作品です。その年の12月にクリスティーは、あの「失踪事件」を起こします。それもあって、この作品は大きな話題となりました。
あらすじ
村の名士であるロジャー・アクロイドが刺殺された。彼の亡き妻の連れ子であるラルフが行方不明となり、嫌疑をかけられるが…
5項目評価
ストーリー(9点)
キングズ・アボット村で起きた資産家アクロイド殺害事件を、 語り手である医師シェパードの視点で追う構成。 序盤はゆっくりだが、事件発生後は一気に緊張感が高まり、 「冗長だが後半で一気に面白くなる」 という読者の声が複数確認できる。 村の人間関係や秘密が次々と明かされていく“濃密なドラマ性”も高評価。
意外性(10点)
本作最大の特徴である“歴史的どんでん返し”は、 「本を持ったまま絶句した」「予想外すぎて唸った」 など、読者の驚愕が多数記録されている。
叙述トリックの源流として、後世の作品に巨大な影響を与えたことも事実。 “衝撃度”という点ではミステリー史でもトップクラス。
キャラクター(8点)
ポアロはすでに“灰色の脳細胞”を駆使する名探偵として確立しており、 「冷厳な眼差しに恐怖すら覚える」 という声もあるほど存在感が強い。キャロラインは 「ミス・マープルの原型」と指摘されるなど、キャラクター的にも重要な作品。
ユーモア(7点)
重厚なミステリーでありながら、 キャロラインの“情報通ぶり”や、 ポアロの芝居がかった言動など、軽いユーモアが随所にある。 読者レビューでも「キャロラインが面白い」 といった声が確認できる。
ただし、作品全体は緊張感が強く、ユーモアは控えめ。
トリック(10点)
本作のトリックは、 「ミステリ界に大きな波紋を投じた名作」「叙述トリックの源流」「フェアかアンフェアかの論争を巻き起こした」 と、歴史的評価が圧倒的。読者の反応も、 「絶句した」 「二度読み必須」 「材料はすべて揃っていた」 など、トリックの完成度を称賛する声が多数。
ミステリーの“構造そのもの”を変えてしまった革新的トリックとして、満点評価が妥当。
登場人物
- ロジャー・アクロイド(地主)
- ラルフ・ペイトン(ロジャーの義子)
- セシル・アクロイド夫人(ロジャーの義妹)
- フローラ・アクロイド(セシルの娘)
- ジェフリー・レイモンド(ロジャーの秘書)
- ジョン・パーカー(ロジャーの執事)
- ミス・ラッセル(アクロイド家の家政婦)
- アーシュラ・ボーン(アクロイド家の小間使い)
- ヘクター・ブラント(ロジャーの旧友)
- フェラーズ夫人(キングズ・パドック屋敷の未亡人)
- ジェームズ・シェパード(医師)
- キャロライン(ジェームズの姉)
- エルキュール・ポアロ(引退した探偵)

登場人物では、フローラがかわいいです。キャロラインもいい味を出している。のちのクリスティー作品に登場するキャラクターの原形が、ここに見られるように感じます。
ただ、まだ完全にキャラが定まっていないというか、少し控えめというか、キャロラインのキャラだったら、のちの作品ならもっとガツガツしていそうです。ですが今作のキャロラインはちょっと品があるんですよね。それはそれでよかったような気もしますけれど。
そして何よりポアロが格好いい…いや怖い! これまでの作品とはまた違った一面を見せてくれます。
感想
あまりの有名作なので、ネタバレする前に読めたら幸運です。初読時、私は読んでいる途中で、「トリック集」にある、あのやつだ、と気づきました。その意味ではこの作品とは、少し残念な出会いでした。
ただ、それを割り引いても、「アクロイド殺し」はとても面白いです。特に、シェパード医師とその姉のカロラインのやり取りが面白い。煙たがりつつも、その愛情を隠し切れないという肉親特有の微妙な距離感が、何ともいえません。
ポアロとシェパード医師のやり取りは、ポアロとヘイスティングズとのものより、落ち着いている…というよりぎこちなさを感じます。そしてその分、物語にシリアスな雰囲気が漂っている気がします。事実この物語のポアロは、厳しくて怖いです。
特に最後の解決編が、めちゃくちゃ怖い。これはホラーです。犯人を指摘する場面は、「私を殺したのは……お前だ!」的な、ドキーッとしてその後、冷や汗がだらだらする感覚です。これはむしろ再読時の方が、それを感じるかもしれません。
犯人が仕掛けたトリックは、少し実現性に疑問があります。危なっかしすぎるでしょう。ちゃんと聞いてもらえるかどうか、偶然になりませんかね。でもそんなことは、この作品に関してはあまりたいしたポイントではないです。
ポアロが冷徹に登場人物たちの嘘や、犯人の偽計を暴いていく流れが、優れていると思います。
読みどころ
最初に書きましたが、「アクロイド殺し」は有名作なのでネタバレの可能性が高いです。ですが、犯人が分かってもこの作品は楽しめます。
というのも、刑事コロンボや古畑任三郎といった、いわゆる倒叙物として読むこともできるからです。むしろその方が、先ほど書いたポアロの厳しさや怖さを、より感じることができるかもしれません。
推理小説は一度読み終わったら、もう一度答え合わせで読み直しますよね。そして、犯人の言葉や行動、態度の裏に隠された真意を読み取って、改めて怖さや哀れさなどを感じます。
それがこの「アクロイド殺し」では、犯人であるシェパード医師の視点で書かれてあるのですから、最初から最後まで、その答え合わせが続くのです。
そう考えると、この「アクロイド殺し」は二度目からが本番であり、何度でも楽しめる作品といえるでしょう。
読むべき順番
ただあまりの有名作ゆえに、クリスティの作品の中で最初に手に取る人が多いのではないかと思います。これはポアロものの三作目ですが、絶対に「スタイルズ荘の怪事件」→「ゴルフ場殺人事件」→「アクロイド殺し」の流れで読んだ方がいいと思います。
その方が、ヘイスティングズ関係の記述を楽しむことができますし、今回の記述者であるシェパード医師からみたポアロの描写と、それまでのヘイスティングズからの描写との違いを感じられるはずです。
今作のポアロはかなり冷徹です。今作を最初に手に取ってしまうと、ポアロがそういう人物だと思ってしまいます。違うんです。ヘイスティングズ目線では、ポアロはむしろユーモアあふれる愉快な人物なんです。そういうことも踏まえて、「アクロイド殺し」を楽しんでもらいたいと思うんですよね。
またクリスティ自身この「アクロイド殺し」で、ポアロシリーズを終わらせようとしたのではないかと思うのです。事実ポアロは引退してキングズ・アボットに越して来たわけです。ポアロ三部作の最後として、「アクロイド殺し」と考えると、この三作は順番に読むべきだと思うのです。
「アクロイド殺し」考察
「アクロイド殺し」に関する考察をしてみました。




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