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アクロイド殺し-アガサ・クリスティー 感想

5.0
アクロイド殺し アガサ・クリスティー

概要とあらすじ

1926年のポアロ長編、第三作。

村の名士であるロジャー・アクロイドが刺殺された。彼の亡き妻の連れ子であるラルフが行方不明となり、嫌疑をかけられるが…という話。

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感想

あまりの有名作なので、ネタバレする前に読めたら幸運です。初読時、私は読んでいる途中で、「トリック集」にある、あのやつだ、と気づきました。その意味ではこの作品とは、少し残念な出会いでした。

ただ、それを割り引いても、「アクロイド殺し」はとても面白いです。まず登場人物のキャラがたっています。特に、シェパード医師とその姉のカロラインのやり取りが面白い。煙たがりつつも、その愛情を隠し切れないという肉親特有の微妙な距離感が、何ともいえません。

ポアロとシェパード医師のやり取りは、ポアロとヘイスティングズとのものより、落ち着いている…というよりぎこちなさを感じます。そしてその分、物語にシリアスな雰囲気が漂っている気がします。事実この物語のポアロは、厳しくて怖いです。

特に最後の解決編が、めちゃくちゃ怖い。これはホラーです。犯人を指摘する場面は、「私を殺したのは……お前だ!」的な、ドキーッとしてその後、冷や汗がだらだらする感覚です。これはむしろ再読時の方が、それを感じるかもしれません。

犯人が仕掛けたトリックは、少し実現性に疑問があります。危なっかしすぎるでしょう。ちゃんと聞いてもらえるかどうか、偶然になりませんかね。でもそんなことは、この作品に関してはあまりたいしたポイントではないです。

ポアロが冷徹に登場人物たちの嘘や、犯人の偽計を暴いていく流れが、優れていると思います。

読みどころ

最初に書きましたが、「アクロイド殺し」は有名作なのでネタバレの可能性が高いです。ですが、犯人が分かってもこの作品は楽しめます。

というのも、刑事コロンボや古畑任三郎といった、いわゆる倒叙物として読むこともできるからです。むしろその方が、先ほど書いたポアロの厳しさや怖さを、より感じることができるかもしれません。

推理小説は一度読み終わったら、もう一度答え合わせで読み直しますよね。そして、犯人の言葉や行動、態度の裏に隠された真意を読み取って、改めて怖さや哀れさなどを感じます。

それがこの「アクロイド殺し」では、犯人であるシェパード医師の視点で書かれてあるのですから、最初から最後まで、その答え合わせが続くのです。

そう考えると、この「アクロイド殺し」は二度目からが本番であり、何度でも楽しめる作品といえるでしょう。

読むべき順番

ただあまりの有名作ゆえに、クリスティの作品の中で最初に読むことになる人が多いのではないでしょうか。これはポアロものの三作目ですが、絶対に「スタイルズ荘の怪事件」→「ゴルフ場殺人事件」の流れで読んだ方がいいと思います。

その方が、ヘイスティングズ関係の記述を楽しむことができますし、今回の記述者であるシェパード医師からみたポアロの描写と、それまでのヘイスティングズからの描写との違いを感じられるはずです。

またクリスティ自身この「アクロイド殺し」で、ポアロシリーズを終わらせようとしたのではないかと思うのです。事実ポアロは引退してキングズ・アボットに越して来たわけです。ポアロ三部作の最後として、「アクロイド殺し」と考えると、この三作は順番に読むべきだと思うのです。

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