概要
1950年のミス・マープル長編12作中4作目です。前作「動く指」から8年ぶりのミス・マープル長編作品です。第二次世界大戦後のイギリス社会が舞台で、「戦後の不安定さ」「社会階層の変化」「村社会の価値観の揺らぎ」といった時代の空気が作品全体に反映されています。
クリスティー自身も戦後の社会変化を強く意識しており、「古い価値観と新しい価値観がぶつかる村」という構図は、この時期の彼女の創作テーマと深く結びついています。クリスティー自身、「伏線の配置がうまくいった作品」として本作を気に入っていたと言われます。
あらすじ
地方紙「ギャゼット」の広告欄に「殺人お知らせ申し上げます…リトル・パドックスにて、お知り合いの方のお越しをお待ちします」というものが載せられた。
リトル・パドックスの女主人レティシィア・ブラックロックは誰かのいたずらだろうと言いながらも、興味本位でやってくるであろう村の人たちのためにその準備をする。ところがその席上で…
個人的評価
みどころ
殺人が起こるまでの、村人たちののんきな様子が面白いです。
今日は楽しい殺人日
五月のように爽やかよ
村の探偵、総出です
みんな出かける、殺人に!
と、バンチが唄うところは、笑ってしまいます。
あとはバンナーの誕生日の場面です。あまり詳しくは書きませんが、ここはじっくり読んでもらいたいです。すべてが終わってからその場面を思い返すと、またいろいろ思うところが出てくるはずです。
全体的にのんきな雰囲気です。その分、犯人が本性(?)をあらわしたところは、なかなか恐ろしいものがありました。あの辺りもなかなかの名場面ですね。
登場人物について
- レティシィア・ブラックロック(リトル・パドックの女主人)
- ドラ・バンナー(レティシィアの旧友)
- パトリック・シモンズ(レティシィアの従兄)
- ジュリア・シモンズ(レティシィアの従妹)
- フィリッパ・ヘイムズ(美貌の下宿人)
- ミッチー(メイド)
- イースターブルック大佐(心理学者)
- ローラ・イースターブルック(その妻)
- エドマンド・スウェッテナム(文学青年)
- スウェッテナム夫人(エドマンドの母)
- ヒンチリフィ(養鶏業者)
- マーガトロイド(養鶏業者)
- ジュリアン・ハーモン(牧師)
- ダイアナ(ジュリアンの妻)
- ルディー・シャーツ(強盗)
登場人物たちはみんな魅力的です。なんといってもドラ・バンナーですかね。頑張ろうとしても失敗し、おたおたしている様子が可愛らしいです。それをハラハラしながらも、温かく見守るレティシィアの様子もいいです。
メイドのミッチーも面白いです。ワーワー騒ぎ立てているのに、レティシィアにうまく丸め込まれるところが滑稽です。最初はうるさいキャラだなぁ、と思っていましたが、バンナーの誕生日にケーキを作るところは、好ましくさえ思えてきました。
登場人物が多く、誰が誰なのかわからない場面もあります。特にバンチとバンナーそしてミッチーは若干キャラと名前が被っています。ちょっとややこしいです。このややこしさもあるいは伏線の一つかも…
登場人物一覧と照らし合わせながら、ゆっくり読み進めるのがおすすめです。
犯人とトリックについて
ミステリー好きな人からすると、犯人の予想はつけやすかったかもしれません。ですが、その動機ついては、意表を突かれました。よくよく思い返してみると、そういう伏線も確かにありました。完全にしてやられました。
トリックに関しては、あんなもんでしょう。それなりに意味がつけられればいいという感じです。
感想
盛りだくさんで、お腹いっぱいという感じです。「〇〇の正体は実は△△だった」というのが、後半に立て続けに起きます。贅沢な趣向でしょうけれど、あまりに多すぎて一番メインのところで、「またか!」となってしまったのが残念です。
殺人が起こるまでの、村人たちの様子は面白く読ませてもらいました。殺人が起こってからは、正直かなりダレます。真相に近づいているのか、そうでないのかわからない話が、永遠と続く感じです。
そして最後に怒涛の伏線回収が待っています。確かに驚きの連続ではありましたが、先ほど書いたように、食傷気味になりました。そのうちのいくつかは、もう少し中盤に持ってきてもよかったのではと思いました。ペース配分の問題です。
とはいえ読み終わってしばらくすると、犯人に対して同情する気持ちがじわじわとわいてきます。普通の推理小説なら、二つ目以降の殺人は蛇足と感じることが多いです。その殺人に意味があるのかと思うものも良くあります。
しかし「予告殺人」においては二つ目以降のの殺人はあってよかったです。確かにだんだんと殺人が雑になっていくのですが、それがある意味犯人の焦りとつながっているような感じがするんですよね。
このときの犯人の気持ちを思うと、なかなか心を締め付けられるものがあります。哀れな犯人、愚かな犯人ではなく、ただ哀しい犯人という感じです。


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