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バグダッドの秘密-アガサ・クリスティー 感想

4.0
バグダッドの秘密 アガサ・クリスティー

概要とあらすじ

1951年のノンシリーズ。

仕事を首になってしまったタイピストのヴィクトリア。意気消沈して公園でボーっとしているところに、魅力的な青年エドワードと出会う。二人は意気投合するも、エドワードはなんと翌日からバグダッドへ旅立ってしまうことになっていた。彼をあきらめられないヴィクトリアは、何とかして自分もバグダッドへ向かおうとするが…

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みどころ

誰が敵か味方かわからない、というハラハラ感があります。ヘンリー・カーマイケルや、アンナ・シェーレが敵の罠を巧みに潜り抜ける様子も、めちゃめちゃ格好いいです。二手三手先を読むような、知力と知力のぶつかり合いが繰り広げられます。

カーマイケルが数珠をカチカチと鳴らすところなんかは最高ですね。クリスティーのスパイスリラーものの中でも、かなり練られた作品だと感じます。

そんな中に少しとぼけたヴィクトリアが放り込まれます。これがちょっとしたアクセントになっていて、安心感を覚えると同時に、日常に忍び寄る不穏な空気みたいなものも感じられて、面白く読むことができました。

登場人物について

登場人物たちみんな格好いいです。ヘンリー・カーマイケルとアンナ・シェーレはもちろんですが、うだつが上がらないダキンが、本当の姿を見せるところなんかも格好いいです。

ちょっととぼけたヴィクトリアですが、彼女はクリスティーの分身ともいえる存在のようです。

つづりミスが多いというのはまさに彼女のことですし、想像上のルファージュ氏という人物発明し、その風体を描いて見せるというのは、幼いクリスティーがやっていたことです。知識がないところから、徐々に考古学に興味を持ちだすところも、クリスティーの一面が見て取られます。

すると見方によっては、この荒唐無稽なお話の中にクリスティー本人が紛れ込んで、どう立ち回るのかという物語だとも見て取れます。そう考えると面白くないですかね。

二都物語

チャールズ・ディケンズの「二都物語」に関する話が出てきます。わりと重要な手掛かりにもなっていますので、未読なら先に読んでおくといいです。結構な長編ですこし気後れする作品かもしれませんが、描写と伏線回収がものすごい名作ですので、読んでおいて損はありません。

感想

ある人物に表と裏の顔があったり、また裏があるかもしれないと思わせたり、それを含めたトリックがあったりと、何が本当で何が嘘なのかわからないところが、とてもスリリングでよかったです。

いろいろな伏線が後になってしっかり回収される当たり、さすがクリスティーという感じです。この作品は特にその辺が綿密に作られているという印象です。ヴィクトリアが真相に気づいていく下りは、感心させられます。

終わり方もめでたしめでたしという感じで、とても読後感がよかったです。クリスティーの冒険スパイスリラーの中では、かなりのおすすめ作品です。

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