概要とあらすじ
1965年のミス・マープル長編12作中10作目です。
マープルが気晴らしのためにやってきた、バートラム・ホテル。古き良き英国の面影を残すホテルで、くつろぐマープルだったが、そこに泊まっているエルヴァイラ・ブレイクという若い娘が、怪しげな男と会っているのを見かけたり、牧師のペニファザーが失踪したりして…という話。
みどころ
古き良き英国の伝統的なものが描かれます。バートラム・ホテルの隅々まで気の届いた感じ。自分もぜひ泊まってみたいと思わせられます。食べ物のシーンもいいですね。ほんものの朝食、ぜひ食べてみたいものです。
ペニファザー牧師のボケっぷりが楽しいです。特に登場シーン、ゴーリンジ女史との掛け合いが面白いです。
あとクリスティーには珍しく、カーチェイスの場面があります。正直それほどうまい描写とは言えませんが、なんかちょっと面白かったです。
登場人物について
いわくありげな登場人物たちが出てきます。
女流冒険家のベス・セジウィックや、オートレーサーのラジスロース・マリノスキーはもちろんですが、受付のゴーリンジ女史ですら、なにやら怪しい。登場人物たちみんな何か腹に一物抱えているような感じです。
それでいて何が起こっているのかよくわからない状況が続きますので、ずーっともやもやします。
一番キャラとして面白いのは、エルヴァイラ・ブレイクでしょうか。彼女が監視の目をかいくぐって、旅に出ようとするところが面白いです。
犯人とトリック
殺人の犯人については、うがった見方をしていたので、予想どおりでした。途中、見方をずらそうとしていましたが、逆にそれが怪しくて確信に至りましたね。
殺人のトリックもそうですが、その他の事件のトリックも、まぁ、そんなもんですか、という感じです。
バートラム・ホテル自体がトリックの一つだった、というようにしたかったのでしょうけれど、あまりそれには成功していないような…
やろうとしていることは面白そうなんですが、何をどうしたらいいかはちょっと思いつきませんが…
カリブ海の秘密
この前の西インド諸島旅行など叔母さんはけっこう楽しんでいたらしいからな。もっとも、殺人事件なんかにまきこまれたのは気の毒だったけど。
この話は「カリブ海の秘密」です。そう考えると、マープルは色々出かけていますね。
感想
殺人事件が起こるのが本当に終盤になってからです。はっきり言って、その殺人事件自体はそれほど重要ではない感じ。それよりも牧師失踪の謎の方が面白かったかな。でもそちらは証言がややアンフェアだったかと思います。
まぁ、なんだかんだいって、マープルが楽しそうにやっているのを読んでいて、こちらも楽しくはなりました。それ以外のところはどうもゴチャついている感じがしました。「青列車の秘密」を思い出しますね。
マープルの活躍が少なすぎて、その点も不満です。むしろノンシリーズでやったらよかったのに。
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