概要とあらすじ
1956年のメアリ・ウェストマコット名義6作中6作目。
両親からの愛を感じられずに育ったローラは、亡き兄の面影を残す妹のシャーリーを妬む。やがてその妬みは彼女の中で大きくなり、妹の死を望むようになる。ローラの満たされない思いをうすうす感づいた隣人のボールドックは、ローラの両親に忠告をするのだが…
みどころ
ローラとボールドックの世代を超えた友情が楽しいです。ボールドックが出てくると、ほっこりしますね。タイトル通り、やや重い話が続く本編の癒し担当です。
話が4つの部に分かれており、それぞれで趣がガラッと変わるのも面白いです。メアリ・ウェストマコット名義の総決算的な話で、特に「春にして君に離れ」「暗い抱擁」「娘は娘」を思わせる場面が見え隠れします。
クリスティーが書きたいことを詰め込んだ、作品のような感じがしました。
感想
「娘は娘」と同じような同じような展開があります。「娘は娘」はそのやり取りに思わず笑いがこみ上げるようなところがありますが、「愛の重さ」はシリアスです。これはこれで面白く感じました。
ローラとシャーリーがもっと表立って対立する展開になるのではないかと思ったのですが、互いが互いを避けるような感じで直接的な対決はあまりないんですよね。その辺がちょっと物足りなかったような気もするし、それがむしろリアルな感じを受けるとも思いました。
中盤から終盤に向けての展開は、あまり好きではない小難しい話に終始します。正直うんざりしました。ああいうのは登場人物の言葉ではなく、行動や態度、その結果起こる出来事などで、それとなく感じられるようにする内容だと思います。
愛を与えることが大事だと思われていますが、それと同じくらい愛を受け取ることも大事だということでしょうか。愛を受け取るというのは、その人の重荷を受け取るのと同じことである、みたいな。もしかすると、キリスト教的な素養がもっとあれば、より理解が深まるかもしれません。
途中うんざりしましたが、そのうんざり状態から最後の結末に至ると、すべてのパーツがきちんとはまるというか、あるべきところにしっかり収まる感覚を受けます。そしてその結末に、ただのハッピーエンドではなく、若干の苦みも感じます。その苦さをも含めて、彼らを祝福したくなりました。
他人に対して良かれと思ってすることが、余計なおせっかいになってしまうというのは、恥ずかしがりでなかなか表に出てこないクリスティーの内面をあらわしているようです。ですが、最後に愛の荷の意味を知ったのは、それでも人と関わりたいというクリスティーの想いも見えるようです。
そういったクリスティの二面性が、この作品に現れているように思いました。
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