概要とあらすじ
1940年のポアロ長編33作中18作目。
門番の娘メアリイを殺害した容疑で、エリノアは起訴されてしまう。全ての証拠がエリノアにとって不利に働く。エリノアは本当にメアリイを殺していないのか? という話。
みどころ
第一章のエリノアの心の動きが面白い。イライラしているのを自制心で抑えこんでいるけれど、ところどころそのイライラがあふれてしまう感じがいいですね。
メアリイが遺言書を書いていて、それを窓からのぞき込むエリノア。ここの描写は完全にホラーです。めちゃめちゃ怖いです。本作品屈指の名シーンです。
論理の展開
ただ、推理小説としては、論理の展開が甘いように感じます。結局犯人はどうしたかったのだろうか?
メアリイを殺してその罪をエリノアにかぶせたいのであれば、殺害状況がおかしくなりませんかね。メアリイとエリノア両方とも殺したいのであればわかりますが、それはそれでその状況は犯人にとって不利になります。
たまたまメアリイだけが死ぬことになって、犯人にとって一番いい結果となりましたが、これは完全に偶然です。ここの描写はもう少し何とかならなかったかと思いました
モルヒネのレッテルの切れ端は、犯人の作為なのか、うっかりなのか? 作為だとすると、やり方が間違っています。なんでわざわざ別物にするのかが意味不明。うっかりだとすると、でき過ぎだしあまりにも杜撰。そんなもの破れた状況で落とすわけがないでしょう。
また犯人は過去にも殺人を行っていたらしく、警察がマークしていた、との話がありました。これは余計な設定だと思います。そんな状況だと、遺産を受け取れませんよね。
結末について
最後ハッピーエンド的に終わりますが、その結末もしっくりこないです。セドン氏も言っていましたが、「局外者」でしょう。割り込み感が半端ないです。
エリノアが自分を押し殺して、感情を表に出さないのが、ここでは悪い方に出ています。どこかで、ロディに対する気持ちをはっきりさせる場面が、あってもよかったように感じました。
感想
殺人までの流れが語られる第一章は、本当に面白かったです。ポアロが出てきて盛り上がるどころか、逆にペースを崩された感じがあります。
推理小説というより、サスペンスとして楽しむのがいいかもしれません。
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