PR

杉の柩-アガサ・クリスティー 感想

4.0
杉の柩 アガサ・クリスティー

概要とあらすじ

1940年のポアロ長編33作中18作目。

門番の娘メアリイを殺害した容疑で、エリノアは起訴されてしまう。全ての証拠がエリノアにとって不利に働く。エリノアは本当にメアリイを殺していないのか? という話。

created by Rinker
¥1,034 (2024/11/19 07:28:06時点 楽天市場調べ-詳細)

みどころ

第一章のエリノアの心の動きが面白い。イライラしているのを自制心で抑えこんでいるけれど、ところどころそのイライラがあふれてしまう感じがいいですね。

メアリイが遺言書を書いていて、それを窓からのぞき込むエリノア。ここの描写は完全にホラーです。めちゃめちゃ怖いです。本作品屈指の名シーンです。

論理の展開

ただ、推理小説としては、論理の展開が甘いように感じます。結局犯人はどうしたかったのだろうか?

メアリイを殺してその罪をエリノアにかぶせたいのであれば、殺害状況がおかしくなりませんかね。メアリイとエリノア両方とも殺したいのであればわかりますが、それはそれでその状況は犯人にとって不利になります。

たまたまメアリイだけが死ぬことになって、犯人にとって一番いい結果となりましたが、これは完全に偶然です。ここの描写はもう少し何とかならなかったかと思いました

モルヒネのレッテルの切れ端は、犯人の作為なのか、うっかりなのか? 作為だとすると、やり方が間違っています。なんでわざわざ別物にするのかが意味不明。うっかりだとすると、でき過ぎだしあまりにも杜撰。そんなもの破れた状況で落とすわけがないでしょう。

また犯人は過去にも殺人を行っていたらしく、警察がマークしていた、との話がありました。これは余計な設定だと思います。そんな状況だと、遺産を受け取れませんよね。

結末について

最後ハッピーエンド的に終わりますが、その結末もしっくりこないです。セドン氏も言っていましたが、「局外者」でしょう。割り込み感が半端ないです。

エリノアが自分を押し殺して、感情を表に出さないのが、ここでは悪い方に出ています。どこかで、ロディに対する気持ちをはっきりさせる場面が、あってもよかったように感じました。

感想

殺人までの流れが語られる第一章は、本当に面白かったです。ポアロが出てきて盛り上がるどころか、逆にペースを崩された感じがあります。

推理小説というより、サスペンスとして楽しむのがいいかもしれません。

created by Rinker
¥1,034 (2024/11/19 07:28:06時点 楽天市場調べ-詳細)

コメント

タイトルとURLをコピーしました