概要とあらすじ
1940年のポアロ長編33作中18作目。
メロドラマとミステリーの融合を意識して書かれた作品として、特に女性人気が高いと言われる作品です。
アガサ・クリスティーは1938年に、生家のアッシュフィールドを売却しました。クリスティーはこの家をかなり気に入っていたようです。「杉の柩」の中でハンターベリイ邸が売却されるくだりは、もしかするとこのアッシュフィールド売却のことを思い起こしながら、書かれたのではないでしょうか。
個人的評価
あらすじ
門番の娘メアリイ・ジェラードを殺害した容疑で、エリノアは起訴されてしまう。全ての証拠がエリノアにとって不利に働く。本当にメアリイを殺したのは、エリノアだったのだろうか?
みどころ
第一部のエリノアの心の動きが面白い。イライラしているのを自制心で抑えこんでいるけれど、ところどころそのイライラがあふれてしまう感じがいいですね。
メアリイが遺言書を書いていて、それを窓からのぞき込むエリノア。ここの描写は完全にホラーです。めちゃめちゃ怖いです。本作品屈指の名シーンです。
登場人物
- ローラ・ウエルマン(金持ちの未亡人)
- エリノア・キャサリーン・カーライル(ローラの姪)
- ロディー・ウエルマン(ローラの義理の甥)
- メアリイ・ジェラード(ウエルマン家の門番の娘)
- エマ・ビショップ(ウエルマン家の召使頭)
- ピーター・ロード(医師)
- アイリーン・オブライエン(看護婦)
- ジェシー・ホプキンズ(看護婦)
- テッド・ビグランド(ガレージに勤める青年)
- エドウィン・ブルマー卿(弁護士)
- サミュエル・アテンブリイ卿(検事)
エリノアのキャラが際立っています。特にエリノアの誇り高い感じと、その心の内のギャップが興味深いです。クリスティーは女性を描くことに定評がありますが、特に第一部のエリノアの描写は秀逸です。
トリック
ただ、推理小説としては、論理の展開が甘いように感じます。結局犯人はどうしたかったのだろうか?
メアリイを殺してその罪をエリノアにかぶせたいのであれば、殺害状況がおかしくなりませんかね。メアリイとエリノア両方とも殺したいのであればわかりますが、それはそれでその状況は犯人にとって不利になります。
たまたまメアリイだけが死ぬことになって、犯人にとって一番いい結果となりましたが、これは完全に偶然です。ここの描写はもう少し何とかならなかったかと思いました
モルヒネのレッテルの切れ端は、犯人の作為なのか、うっかりなのか? 作為だとすると、やり方が間違っています。なんでわざわざ別物にするのかが意味不明。うっかりだとすると、でき過ぎだしあまりにも杜撰。そんなもの破れた状況で落とすわけがないでしょう。
また犯人は過去にも殺人を行っていたらしく、警察がマークしていた、との話がありました。これは余計な設定だと思います。そんな状況だと、遺産を受け取れませんよね。
結末について
最後ハッピーエンド的に終わりますが、その結末もしっくりこないです。セドン氏も言っていましたが、「局外者」でしょう。割り込み感が半端ないです。
エリノアが自分を押し殺して、感情を表に出さないのが、ここでは悪い方に出ています。どこかで、ロディに対する気持ちをはっきりさせる場面が、あってもよかったように感じました。
感想
殺人までの流れが語られる第一部は、本当に面白かったです。あの鬱々としたエリノアの心理描写は本当に素晴らしい。あとクリスティーって、ホラー的な描写も結構うまいんですよね。
第二部以降も悪くはないんですが、普通ならポアロが出てきて盛り上がるところが、逆にペースを崩された感じがあります。第一部が良すぎたのかもしれません。ポアロが出てきてからは、いつものポアロ作品なんですよね。
推理小説というより、サスペンスとして楽しむのがいいかもしれません。第一部だけでも読む価値があります。
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