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死が最後にやってくる-アガサ・クリスティー 感想

4.0
死が最後にやってくる アガサ・クリスティー

概要

1945年のノンシリーズ。紀元前二千年のエジプトを舞台にしたミステリーです。この作品はエジプト中王朝時代の書かれた実在の手紙(Heqanakhte が自分の妾に対する家族の扱いに不満を述べている)をきっかけにして書かれました。

あらすじ

夫を亡くし実家に帰ってきたレニセンブ。騒々しいながらも、昔と変わらない生活がそこにはあった。しかし、家長のインホテプが愛妾のノフレトを連れたことにより、その生活がだんだんと崩れていきます。そして家族たちの裏の面が見え始め…

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みどころ

描かれるのはいつものクリスティーの人間関係によるごたごたです。ですが、舞台が紀元前二千年のエジプトということで、それだけで雰囲気が変わって新鮮でした。乾いた砂漠。ピラミッド。そういったものを頭の片隅に置きながら、読んでいました。

普段見せている姿が仮面の姿で、ノフレトがあらわれてから家族が壊れていく様子と、その本性が表に現れる様子が面白いです。そしてその原因を作ったノフレト自身にも二面性があり、レニセンブが一瞬ノフレトと心を通わしそうになる場面もよかったです。

登場人物について

登場人物たちはみんな魅力的です。最初は古代エジプト人の名前が頭に入らず、登場人物表と照らし合わせながら読み進めていましたが、途中からは全ての人物がいきいきしてきます。

もちろんノフレトもエサもヘネットもいいですが、私のお気に入りはカイトです。愚鈍な女という表面的な姿が、話が進んでいくにつれて変わっていくのが面白く、そして恐ろしいです。

犯人とトリック

トリックは正直よくあるやつです。クリスティーの他作品にも同系統のトリックはありました。ただ、クリスティーのことだから、そこをひっくり返してくるかもしれないとも読んでいるときは思っていました。

そういう意味では、意外な犯人と言えなくもないです。

感想

面白かったです。舞台が古代エジプトということで変わっていますが、内容はいつものクリスティー節。安心して読むことができます。

登場人物が一人一人と死んでいくところは、「そして誰もいなくなった」のような雰囲気もあります。さすがに誰もいなくなることはありませんでしたが…

不満点はクリスティーおなじみのカップリングです。あれは、なんだかなぁという感じでした。ただ、どちらにしても不満が出そうな感じですね。「パディントン発4時50分」パターンのような、あえて結末を読者に任せる形でもよかったような。

「アガサクリスティー完全攻略」で中身がないと酷評されていましたが、私は面白かったです。情景を脳内補完できる博物館派ということなのでしょうか。

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