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殺人は容易だ-アガサ・クリスティー 感想

3.0
殺人は容易だ アガサ・クリスティー

1939年の作品。元警察官のルークは老婦人から、彼女の村で連続殺人事件が起こっていると聞かされる。どうせ空想話だろうと聞き流していたが、その後その老婦人は車に引き殺されていた。彼女の話は真実だったのだろうか…という話。

すでに起きている殺人事件を、ルークが調査するという展開。聞き込みを進めていくうちに、殺されたであろう人たちの人物像が浮かび上がってきます。「マギンティ夫人は死んだ」と同じような感じです。

「マギンティ夫人」の方はそれが本当に退屈でしたが、この「殺人は容易だ」の方は割と楽しく読むことができました。

「マギンティ夫人」の方は、じわじわわかってくるのに対して、「殺人は容易だ」の方は、最初にバーンと出しておいて、それにいろいろ付け足していく感じです。その違いが読み味に影響しているのではないかと思います。

ただ、探偵役のルークがアホ過ぎる。犯人の作為ではなく、自分で勝手にこけている印象。調べたらすぐわかることを、調べずにあーでもない、こーでもないと言っている。

ブリジェットがルークのアホさ加減をを補うのかと思えば、そうでもない。なんかいまいち締まりのない展開が続きます。

その探偵役が、抜けている人物という風に描かれているのであれば、まだよかったと思いますが、普通にやっているんですよね。容疑者たちに対する考察をする箇所が2か所ありますが、ほぼ同じ話を繰り返しています。若干イライラしてしまいました。

犯人は少し手前でわかりました。ただ、動機については逆で考えていました。ただそれだと、その犯人の言動がおかしなことになる。すると、犯人はやはり違う人なのかと、少し迷っていました。

結局、犯人はその人物でしたが、動機が考えていたものとは違っていました。言われてみると、その動機であっても、その犯人と考えることはできます。この話は動機探しの物語だと言えるでしょう。

とはいえ、犯人の意外性と比べて、意外な動機というのは、衝撃度は劣ります。演出に少し失敗している感はあります。

ダブルミーニングとなる言葉や、思い込みなどがあって、推理の方向性がずれてしまう展開がありますが、それが犯人の作為とは関係ないところで起こっています。

そういったこともあり、動機の異常性のわりに、犯人の恐ろしさがあまり感じられません。もう少し賢い探偵がいてこそ、犯人も際立つのではないかと思います。

最期、なんかハッピーエンドみたいになっていますが、あれだけトンチンカンなことをしていて、めでたしめでたしじゃねーよ、と言いたくなりました。

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