概要
1946年のポアロ長編33作中22作目。
殺人現場のプールは、イギリスの舞台俳優フランシス・L・サリヴァンの家をモデルにしており、献辞にて謝意を述べています。
アガサ・クリスティーがポアロを登場させたことを悔いた作品で、「彼なしだったらはるかにこの小説はよくなったろうと考え続けていました」と語っており、戯曲化したときは、ポアロを登場人物から省きました。
個人的評価
あらすじ
アンカテル夫妻に招かれたポアロは、庭にあるプールで、ジョン・クリストウが倒れているのを発見する。そのそばには、銃を持って立ち尽くす妻のガーダがいる。状況的には、ガーダがジョンを撃ったと考えられるのだが…
登場人物
- ヘンリー・アンカテル卿(行政官)
- ルーシー・アンカテル(ヘンリーの妻)
- ミッジ・ハートカースル(ルーシーの従妹)
- ヘンリエッタ・サヴァナク(彫刻家)
- エドワード・アンカテル(ルーシーの従兄)
- デイヴィッド・アンカテル(ルーシーの従兄)
- ジョン・クリストウ(医者)
- ガーダ・クリストウ(ジョンの妻)
- エルシー・パターソン(ガーダの姉)
- ヴェロニカ・クレイ(映画女優)
- ガジョン(執事)
- シモンズ(女中)
登場人物が生き生きとしています。いかにもアガサ・クリスティーという作品だと思います。登場人物のルーシー・アンカテル、ヘンリエッタ・サヴァナク、ジョン・クリストウ、ガーダ・クリストウの四人の描写が特に素晴らしいと思いました。
人間だれしも一面だけを持っているわけではありません。優しいけれど意地悪、とぼけているようで冷徹といった、誰しも持っている二面性をしっかり描いているように感じます。
それに対してミッジとデイヴィットの二人のかげが薄く感じられました。その辺が少しもったいなかったなぁ、という印象です。
トリックについて
トリックというか、意外な犯人というのは、別のクリスティー作品でもっとうまくやっているのを見ているので、少し拍子抜けした感じはあります。
犯人が施した作為が、有効に働いていないのも残念なところかな。それも含めて、愚かな犯人ということでしょうけれど。
感想
他の登場人物に魅力がありすぎるからでしょうか、ポアロの存在感が薄いです。確かにクリスティーが言うとおり、ノンシリーズ作品でもよかったような気もします。
とはいえ、ダイイングメッセージの意味や、犯人の愚かさ、残された人の悲しみなどが心にしみます。後になればなるほど、じわじわとくるいい作品だと思います。
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