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死の猟犬-アガサ・クリスティー 感想

3.5
アガサ・クリスティー

1933年発表の短編集です。

全体的に心霊的な話が多いですね。ただそこに合理的な謎の解明を求めようとしたり、心霊的な枠組みの中であっても驚きの結末が用意されていたりなど、ミステリー的な要素はちりばめられていたと思います。

最初はクリスティー作品として、毛色が違う気がしてあまりページが進みませんでしたが、だんだんこの世界観にはまっていき、最後の方は面白く読むことができました。

ミステリー的には「赤信号」、怪奇小説的には「ジプシー」がよかったかな。映像化された「検察側の証人」もなかなか面白かったです。

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死の猟犬

ドイツ兵が修道院に侵入したとき、突然爆発が起こり、ドイツ兵が吹き飛んだ。その爆発はそこの修道女が起こした超常現象なのか?

感想

その修道女は気が違っているのかどうか、という調査が行われます。特におどろおどろしい様子はなく、話が進みますが、最後にちょっとゾッとするオチが待っています。

最初はなんか大したことがない話かなぁ、と思っていましたが、後でじわじわとくる感じです。

赤信号

降霊術で「帰っちゃいけない!」とお告げがあった。その夜家に帰ったアリントン卿が銃殺され、彼の甥のダーモットに疑いがかかるが…

感想

短いながらちょっとしたちゃんとした推理小説で、すべてが解決した後に、もう一度読み直して確認したくなります。

ダブルミーニングの会話や、それによる勘違いが起こすすれ違いが、なかなか面白いです。

第四の男

多重人格者のフェリシーは、最後自分の首を自分で締めて死んでしまう。なぜそんなことになったのか?

感想

オチは途中で読めてしまいますが、それがメインではありません。なんというか後味の悪い、嫌な感じが残る話でした。いわゆるイヤミスという感じでしょうか。たまにはこういうのもいいですね。

ジプシー

幼いころにジプシーの夢を見て、ジプシーに恐れを抱くディッキー。夢に見たジプシーそっくりの女性に出会い、「あたしだったら、そっちには行かないけれど…」警告を受けるが…

感想

不気味な雰囲気が物語中を覆います。途中驚きの展開があり、そっちかぁ、となりました。

最後、悪夢から目が覚めるような感じがよかったです。先ほどの「第四の男」の逆バージョンな感じです。

ランプ

子供の幽霊が出るという家に引っ越してきた、ランカスター夫人とその家族。ランカスター夫人には感じられないが、その父親には確かに子供が泣いている声が聞こえる…

感想

なんというか、悲しい話。突然梯子を外された感覚です。最後に父親が別の方向を指さす場面は、彼の優しさなのか何なのか。

ラジオ

心臓が悪いハーター夫人。気晴らしのためにラジオを購入したが、時々亡き夫のパトリックの声がそこから聞こえる…

感想

何が起こっているのかは、ちょっとミステリーを読んでいる人なら想像はつきます。結末がそういうことになって、振り返って読み直すと、確かにそういう記述がありました。まぁ、因果応報というやつですね。

星新一っぽい読み味の、まさにショートショート的な話でした。

検察側の証人

老婦人殺しで起訴されたレナード・ヴォール。状況は彼にとって不利なものになります。彼の味方になるかと思われた妻は逆に彼を憎み、彼に不利になる証言をする始末。ヴォールの弁護を担当するメイハーンは困ってしまって…

感想

エミリー・フレンチと話していたのは誰なのか? なぜ妻は夫を憎んでいるのか? モグソン夫人は何者で、なぜ手紙を持っていたのか? いろいろな謎を残しながら、裁判が終わります。

意外なオチでびっくりしました。しかし、偽証罪で有期刑になるという話はどうなるのでしょうか。

青い壺の謎

早朝にゴルフ練習をしていると、「人殺し! 助けて!」という声が聞こえる。ジャックはその声に方向に駆け寄るが、そこにいた女性は何も聞いていないと言う。また別の日にゴルフ練習をしていると、同じ場所の同じ時間に同じような声が聞こえて…

感想

これはまぁ、途中でオチが読めました。ちょっといいなぁ、と思っている女性に、頭がおかしいと思われて、イライラするジャックが面白いです。

アーサー・カーマイクル卿の奇妙な事件

アーサーが急に記憶をなくし、奇妙な行動をとるようになった。心理学者のカーステアズはその原因を探ろうとするが…

感想

アーサーが奇妙な行動をとる理由は、すぐに想像がつきます。むしろカーステアズがそれに気づくのが遅すぎて、少しイライラします。

「きれいな灰色のペルシャ猫が一匹、彼女の歩く足に甘えてじゃれついていた」という微笑ましい描写が、実はそんな微笑ましいものではなかったことがわかるところが、なかなか面白かったです。

翼の呼ぶ声

富豪のヘイマーは家への帰り道に、不思議な音楽を演奏する男に出会う。それ以来、自分が大地を離れ、上へ上へと引っ張り上げられる夢を見るようになる…

感想

幸せとは何か、というのがテーマです。まぁ、よくある話でしょうか。セルドンが食いついていた「運河」とは、何をあらわしていたんでしょうかね。夢占いでは、「感情の流れを」をあらわしているそうですが。

最後の降霊会

霊媒師のシモーヌのもとに、娘をなくしたエクス夫人がやってくる。降霊は体に負担がかかるので、これを最後にすると言って、エクス夫人の娘を降霊するのだが…

感想

結局のところ、ラウールが一番の能無しということでしょう。オチは、まぁ、よくある話かな。エクス夫人の娘はどうなったんでしょうかね。

S・O・S

モーティマの車がパンクし、大雨の荒野で立ち往生してしまった。近くの丘にポツンとと一見の家があり、そこに助けを求める。その家にはディンズミードとその妻、娘二人と、息子一人がいた。モーティマは一夜の宿を借りることにし、部屋に行くと、テーブルの埃の中に S・O・S の文字が…

感想

S・O・S は誰が書いたのか? どういう危険が迫っているのか? という謎。また遺産の話が出てきて、どう解決するのだろうか、と思っていると、あっけなく話が終わりました。

多少の驚きはありましたが、あまりにあっけなさすぎかな。モーティマと娘どちらかとの恋愛なんかがあっても、面白かったかも。

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