概要とあらすじ
1952年のポアロ長編33作中24作目。
雑役婦であるマギンティ夫人が自宅で撲殺され、間借人のベントリイが逮捕された。しかしスペンス警部には彼がやったとはどうしても思えず、ポアロに再調査を依頼する…という話。
感想
ある人物が殺されて、ある人物が疑われている。その人物の無実を証明してほしいという依頼をポアロが受けます。
このパターンは普通の推理小説にはよくありますが、クリスティのものでは珍しいのではないでしょうか。たいていはポアロがなんやかんやしているところに、殺人事件が起こってそれを調査するという流れだと思います。
そしてこの形式の変化によってどうなったかと言うと、なかなかページが進まなかったです。殺されたマギンティ夫人の関心がわかないからでしょうね。正直いうとあまり面白くはありませんでした。
ポアロが色々周りながら、マギンティ夫人はどういう人物だったのかというのを調査していくのですが、それがなんというかつまらなかったです。
ゼロからの調査ですから、証言を集めていくうちに、徐々にマギンティ夫人の人物像が形作られていきます。ですがそうなると、驚きがないんですね。
もともとある印象が、調査をしていくうちに連れてどんどん変わっていったり、この人物はこうだと思っていたが、こういう人だったんだ。みたいな驚きがないんですね。
そういう興味がわかないマギンティ夫人ですから、それを殺した犯人が見つかったとしても、はぁそうですか、という感じです。
トリックと犯人
犯人はわかりました。明らかに怪しいですし、ある程度推理小説を読みなれている人なら、「あっ、これは」となるんじゃないかな。
おまけに、いったん、家を出て車に乗ってからも二回もひきかえして、母親が満足しているかどうか見に行ったものだ。
さすがにこの表現はバレバレでしょう。しかも、外出して家に帰ってみると、その母親が死んでいるのですから。
もう、犯人はこいつで決まりだろうと思いながらも、そこをこえてくるのかと思っていたら、結末はそのままだったという感じでした。
よかったシーン
ただひとつ、いいと思ったシーンがあります。ポアロが駅で誰かに襲われたあと、スペンス警視に連絡するシーンです。
「あなたにお知らせしたいニュースがあるのです。素晴らしいニュースです。誰かが私を殺そうとしたのです」
このセリフは、なかなか格好いいです。実際は少し見当違いな発言だったんですけれどね。
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