概要
1952年のミス・マープル長編12作中5作目です。
本作の舞台ストニイゲイトは、非行少年の更生施設を併設した邸宅という、マープル作品としては異色の設定です。これは、戦後のイギリスで実際に議論されていた「更生と教育のあり方」にクリスティーが関心を持っていたことが背景にあります。
クリスティーは戦後社会の「善意と理想主義」と「現実の混乱」のギャップに強い関心を持っており、本作のキャリイの人物像にもその影響が見られます。彼女の人物像は、クリスティーが若い頃に出会った慈善活動家たちの影響を受けていると言われています。
あらすじ
ミス・マープルは、旧友キャリイの身を案じる人物から「彼女の周囲で何かよくないことが起きている」という不穏な知らせを受ける。キャリイは、慈善活動に人生を捧げる温かい女性で、彼女の住むストニイゲイト邸は、非行少年の更生施設を併設した大きな屋敷として知られていた。
マープルは久しぶりに友人を訪ねるのだが…
個人的評価
登場人物について
- キャリイ・ルイズ・セロコールド(富豪)
- ルイス・セロコールド(キャリイの夫)
- ルース・ヴァン・ライドック(キャリイの姉)
- エリック・グルブランドセン(キャリイの最初の夫)
- クリスチアン・グルブランドセン(エリックの長男)
- ピパ(キャリイの養女)
- ジーナ(ピパの娘)
- ウォルター・ハッド(ジーナの夫)
- ミルドレッド・ストレット(キャリイの娘)
- ジョニイ・リスタリック(キャリイの二番目の夫)
- アレックス・リスタリック(ジョニイの長男)
- スティーヴン・リスタリック(ジョニイの次男)
- エドガー・ローソン(セロコールド家の使用人)
- ジュリエット・ベルエヴアー(キャリイの付添人)
- マヴェリック博士(精神医学者)
- カリイ(警部)
- レイク(部長刑事)
- ジェーン・マープル(独身の老婦人)
登場人物の血縁関係が、入り乱れています。
原因はキャリイで、彼女は三回も結婚しています。一人目の夫とは死別。この夫は大金持ちなので、キャリイは大金持ちになります。二人目は夫が浮気をして別れたあと、事故死します。そして今の夫です。彼は博愛主義者らしいですが、どうやら度を越している様子。
最初の夫との間に子供がいますが、それとは別に養子もいます。最初の夫は再婚で、前に別の女性との間に子供がいます。二人目の夫にも最初の結婚時に子供がいて、その子供たちも登場します。とりあえずややこしい。
ですが、それらの登場人物とマープルが割と早い段階でじっくり話をすることがあり、登場人物の整理はまだやりやすかったと思います。
ちなみに「ピパ」という名前ですが、戯曲「蜘蛛の巣」にも登場しています。もちろん別人設定ですが、お気に入りの名前なので使いまわしたんでしょうか。
みどころ
マープルと登場人物たちが話をすると言いましたが、そのくだりが結構面白い。登場人物は互いが互いを嫌っており、その悪口をミス・マープルにぶつけます。
人の良い、人畜無害そうなばあさんになら、別に言っても構わないだろう、といった感じ。マープルのひょうひょうとした感じがなかなか面白いです。
トリックについて
トリックは正直子供だまし。読んでいて、違和感がありますので、見抜きやすいでしょう。あの場面はもう少しどうにかならなかったのだろうか。キャリイの純粋さを出したかったのでしょうが、それのせいで、緊迫感が薄れています。
感想
最後のお涙頂戴的な、犯人の結末はどうなんでしょう。
キャリイがどこか人間離れした調子なので、あまり心に残るものがありませんでした。最終的に全て丸くおさまって、めでたしめでたしとなりましたが、何かモヤモヤするなぁ、という印象です。
原因はやはりキャリイです。彼女をもっと上手に動かすことができたら、もっといい作品になったと思います。
マープルの学生時代の描写が少しあったので、その辺は楽しめました。マープルは看護婦になりたかったんですね。


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