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パーカー・パイン登場-アガサ・クリスティー 感想

3.5
パーカー・パイン登場 アガサ・クリスティー

1933年の短編集です。

前半はパーカー・パインの事務所に訪れる人の「不幸」を解決するという話。後半は中東の旅に出かけたパーカー・パインが出くわす事件を解決する話になっています。

前半では「不満軍人の事件」、後半では「デルファイの神託」が面白かったです。

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中年夫人の事件

夫の浮気に困ったパキントン夫人は、パーカー・パインに依頼をするが…

感想

オチは、まぁそうなるだろうなぁ、という感じですが、それはそれでよかったです。

浮気をする男心と、ロマンスを大切にする女心が上手に描かれています。女性と踊っているパキントン氏を見る、パキントン夫人の描写がとても面白いです。

不満軍人の事件

単調な生活に飽き飽きしているウィルブラム少佐は、パーカー・パインに依頼をするが…

感想

なんかベタな話だなぁ、と思いながら読んでいると、最後にちょっとした驚きがあります。なるほどそういうことね、となり、めでたしめでたしという感じです。

これ、一話目をフリに使っていますかね。そうすると、かなりのテクニシャンですね。

困った婦人の事件

出来心で宝石を盗んでしまったのだが、それを気付かれずに返したい、とセント・ジョン夫人の婦人は、パーカー・パインに依頼をするが…

感想

「数分間の暗やみがまことに楽しかったのだ」という表現がとても美しいと思いました。

セント・ジョン夫人が箱を開けて、ダイヤの指輪を見たとき、「けだもの!」や「なんていやな人でしょう!」と言ったのは、なぜなんでしょう? ここの部分の意味がよくわからないです。

不満な夫の事件

妻が離婚したがっていて困っており、ウェード氏はパーカー・パインに依頼をするが…

感想

ウェード氏が面白いです。「ぼくは彼女が好きなんですよ。つまり、その……ぼくは彼女が好きなんです」なんていうところは、ウェード氏の純情さや真面目さ、そして少し抜けた感じをよく表しています。

最後は笑えるオチで締めくくられます。ドタバタコメディみたいな感じですね。

サラリーマンの事件

決まり切った道筋から、ちょっと外れてみたいというロバーツ氏は、パーカー・パインに依頼をするが…

感想

一話目の「中年夫人の事件」の男性バージョンといったところでしょうか。最後の「彼も、何かあった輝かしい仲間の一人なのだ」という一行が、格好いい。

富豪夫人の事件

富豪になった元農家のアブナー・ライマー夫人。贅沢をするのにも飽きてしまって、パーカー・パインに依頼をするが…

感想

農家の暮らしが楽しそう。ここまで全部ワンパターンと言えば、そうなんですが、それゆえの安心感があります。今回もめでたしめでたしという感じで、読後感は良かったです。

あなたはほしいものをみな持ってますか?

列車の中でパーカー・パインはある婦人と出会う。その婦人が言うには、夫の吸取紙に意味が分からない文字が書いてある。そして列車内で火事騒ぎが起きて…

感想

パーカー・パインがジェフリーズ氏に語る女性論については、まぁ、そういう見方もあるのかなぁ、という気持ち半分です。あまりスカッとしないですね。解決したと言えば、解決したんでしょう。

バグダッドの門

バクダッドへ向かう車の中で、スミザーストが殺された。彼は前日の夜、パーカー・パインになにやら友人のことで困っていると言っていたが…

感想

パーカー・パインが犯人に仕掛けるワナは鮮やかです。

それ以外はなんというか、バタバタして終わった感じですかね。登場人物が多すぎてよくわかりません。登場人物たちを掘り下げて、長編でじっくりやった方がいいネタだと思いました。

シラーズの家

大臣の娘、レイディ・エスター・カーは全く人と関わり合おうとしない頭のおかしい人。その相手役だったミュリエル・キングは三年前、二階のバルコニーから転落して死んだと言うが…

感想

目の話は、別の話で見たような気がする。なんだったかな。このアイデアを長編に応用したのでしょう。話としては可も不可もなくという感じ。そういうオチね、という程度です。

高価な真珠

キャロルのしていた、真珠のイヤリングがなくなった。さて誰が取ったのだろうか…

感想

怪しい人物はすぐにわかります。しかしパーカー・パインが、なぜその人物を怪しいと特定する経緯は、なかなかに鮮やかです。確かに疑われずにその行為をするのは、その人しかいませんね。

ナイル河上の死

夫が私を毒殺しようとしている、とパーカー・パインに言うレイディ・グレイル。その晩に本当にレイディ・グレイルは毒を飲んで死んでしまった…

感想

登場人物がなかなか面白そうな人たちです。場面からしても、「ナイルに死す」のプロトタイプなのではないでしょうか。

展開が速すぎて、推理の材料がほとんどないのが残念ですが、短編なのでしょうがないですね。

デルファイの神託

ピーターズ夫人の息子のウィラードが誘拐された。ピーターズ夫人はパーカー・パインに相談して、解決してもらおうとするが…

感想

明らかに怪しい人物がいるのですが、それが犯人ということはないだろう、と思います。すると真相はこうかな、いやこうかもしれないと、あれこれ考えるそれをもう一つ越えてきた感じです。

短い話の中でなかなかの驚きを与えてくれます。最後の一行でガラッとひっくり返される展開です。なかなか面白かったです。

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