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おしどり探偵-アガサ・クリスティー 感想

3.0
おしどり探偵 アガサ・クリスティー

1929年のトミーとタペンスものの短編集です。

トミーとタペンスのやり取りや、活躍をめでるファンブック的な内容ですね。中には馬鹿馬鹿しい話もありますが、逆にトミーとタペンスものとしてはちょうどいいとすら感じます。長編ではタペンスの活躍が目立ちますが、こちらではトミーの活躍が多いです。それも見どころでしょうか。

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アパートの妖精

退屈しているトミーとタペンス。そこにカーター氏があらわれ国際探偵事務所をするよう提案する。そこはレオドア・ブラントという人物が所長だったが、なにやら怪しいたくらみをしているようで現在拘束されている。その代わりをトミーとタペンスがすることになるのだが…

トミーとタペンスが国際探偵事務所をする経緯が語られるプロローグ的な章。二人の会話が楽しいです。

お茶をどうぞ

セント・ヴィンセント氏は帽子屋の売り子であるジャネットに好意を持っていたが、ある日から彼女の姿が急に見えなくなった。彼は心配し、トミーとタペンスに彼女を探してくれるよう、依頼するのだが…

あからさまに前振りがありましたので、何かしらの作為があるのだろうと思いましたが、結構な子供だまし。でもそれがトミーとタペンスものとしてはちょうどいい印象です。

桃色真珠紛失事件

キングストン・ブルース大佐のもとにやってきたベッツ夫人の桃色の真珠がなくなった。ブルース嬢は母親に言われてトミーとタペンスの事務所に調査を依頼しに来た。しかしなぜかブルース嬢はそれにはあまり乗り気のようではなく…

ホームズの真似をして失敗するトミーが笑えます。前話の「お茶をどうぞ」とのつながりで、ほっこりするオチがあって楽しいです。

怪しい来訪者

トミーとタペンスのもとにロシアからの青い封筒が届く。長官から気をつけろと言われていた手紙だ。とそこにチャールズ・バウワーと名乗る医者がやってきて、いっしょに悪党を捕まえてほしいと依頼してくる。だが、どうもその様子にこれはワナではないかと…

トミーとタペンスものらしい、国際陰謀の話。犯人側の策略はバレバレですし、犯人の裏をとるトミーのやり方も子供だましですが、まぁ、それはそれで楽しかったです。

キングを出し抜く

新聞広告の「キングを出し抜く必要あり」との怪しい広告に誘われて、「スペードのエース」に向かうトミーとタペンス。嫌な感じがして隣の部屋に行くと、そこにはハートのクイーンの扮装をした女が刺されていた…

犯人はいかにもという人物なので、あまり驚きはありません。トリックも正直子供だましです。仮装の話は他の作品にもよく出てきますが、大体同じような話ですね。ただ、犯人の最後が衝撃的。トミーとタペンスものに似合わない、後味の悪さを感じさせる事件でした。

婦人失踪事件

冒険家のガブリエル・スタンヴァンソンは冒険先から予定より二週間早く帰ってきて、婚約者のハーミィが滞在しているレディ・スーザンのもとに向かった。しかしハーミィは友人のもとを訪ねているとのことで不在だった。ガブリエルはその友人たちに連絡を取ったが、彼女の行方は知れず…

とても軽い話。ハーミィが姿を見せなかった理由がなかなか面白いです。振り返ると、ちゃんと前振りもありましたね。

目隠しごっこ

目の見えない探偵の真似をするため、眼帯をつけて街に出るトミー。そこにある男がやってきて、娘の誘拐事件の解決を依頼してきたのだが…

今作のトミーは格好いいです。トミーのいたずらが、解決にうまく作用してしまう展開が面白い。子供っぽいスパイものですが、いかにもトミーとタペンスという感じで、楽しいです。

霧の中の男

女優のミス・グレンから、助けてほしいと手紙を受け取ったトミーとタペンス。彼女が滞在しているモーガンズ・アヴェニューのホワイトハウスに向かうと、すでに彼女は頭を鈍器で殴られて亡くなっていた…

ちゃんとした推理ものでした。思い込みによって、実際にあったことと反対の印象を抱いてしまうという話はなかなか面白かったです。

パリパリ屋

相当な数の贋札が出回っている。レイドロウ夫妻の周辺がその出所らしい。トミーとタペンスはレイドロウ夫妻のもとを訪れて、その出所を探るのだが…

トミーの活躍がうれしいです。危機を乗り越えた方法は正直子供だましですが、それだからこそトミーとタペンスの物語という感じです。楽しく読めました。

サニングデールの謎

セッスル大尉がゴルフ場で、女性の帽子のピンで刺されて亡くなった。彼はその直前に仕事のパートナーであるホラビーとゴルフをしていて、途中茶色の服を着た背の高い女性と会って、数分その場を外していたが、その後ひどく動揺していたらしく、ゴルフに全く集中できていなかった…

トミーとタペンスが安楽椅子探偵となって事件を解決します。ああでもない、こうでもない、と互いに会話しながら解決に至る過程は、決して鮮やかではありませんが、トミーとタペンス的なやりとりが楽しいです。

死のひそむ家

ロイス・ハーグリーヴズの家に、チョコレートの箱が届き、それを食べた人たちの気分が悪くなった。分析すると、少量の砒素が入っていたことが分かった。トミーとタペンスはその調査に乗り出すことに決めたが…

犯人かと思われていた人物が、あっさり亡くなるところは驚きました。正直、証拠という証拠は何もないですが、トミーとタペンスやりとりが楽しいので、まぁいいでしょう。

鉄壁のアリバイ

モンゴメリー・ジョーンズはユーナ・ドレイクと賭けをすることになった。ユーナが同一時刻に別の場所にいたという証拠を出し、それをモンゴメリー氏がそのどちらが本当で、どうやってそれを行ったのかを証明するというものだった。

鉄壁のアリバイという題名から考えて、心に浮かんだことがそのまま真相でした。これだけはやってはいけないというトリックですが、トミーとタペンスものだと、まぁ、それもありかなと思わせられてしまいます。

牧師の娘

モニカ・ディーンは伯母から財産をすべて相続したが、伯母が住んでいた家を除くと、お金はほとんど残らなかった。するとその家を買いたいという人があらわれたので、売ろうかとも考えたが結局断った。するとその家にポルターガイストのような現象が現れ始めて…

ポルターガイストの謎は、まぁ想像通りでしたね。それよりも暗号が面白いです。potatoes を分解するとそうなるんですね。なるほどなぁ。

大使の靴

旅行から帰ってきたウィルモット氏のもとに、ウェストラムの使いがやってきた。どうやら船で預けていた鞄が、ウェストラムのものと取り違えられていたようだ。後日ウィルモット氏がウェストラムと会う機会があり、そのことを話すと、ウェストラムはそんなことは知らないと言う…

トミーが格好いいです。二重三重の裏のかき合いは、「NかMか」を彷彿させるような感じです。タクシーの下りなんかは、なかなかしゃれた手際でしたね。

16号だった男

トミーとタペンスの事務所にいよいよ16号が乗り込んでくるらしい。自分がブラントという作り話を信じさせ、相手の信頼を得なければならない。特別警戒態勢を敷いて、待ち構えるが…

人物消失の謎。なかなかスリリングで、意外な真相楽しめました。タペンスのはったりも面白いですし、トミーのタペンスを思う気持ちもぐっときます。アルバートの一言が解決のカギになるところは、トミーとタペンスものの最後にふさわしい展開だと思いました。

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