1960年の短編集。ポアロ物が5編とマープル物が1編の計6編です。ポアロもの長編「鳩のなかの猫」とノンシリーズ「蒼ざめた馬」の間に発表されたものです。
「はじめに」の章にある、クリスティーの子供時代がとても可愛らしいです。素晴らしいクリスティーからのクリスマスプレゼントですね。
私的には、「クリスマス・プディングの冒険」と「スペイン櫃の秘密」が面白かったです。
クリスマス・プディングの冒険
とある国の王子が宝石を盗まれてしまった。それを追ってある家族のもとに向かうポアロ。その家族ではクリスマスのパーティーを行うために、多くの人物が集まっていたが、そこの女主人であるレイシイ夫人にもまた心配事があって…
感想
宝石の盗難と、家族の悩み事がどうつながるのか、まったく謎でしたが、なんとかうまくつなげた感じです。でもちょっと無理があるかな。そんなことよりもクリスマスを楽しむ子供たちの様子とか、料理の描写が素晴らしく、わくわくします。
そんな楽し気な雰囲気の中、終盤で起こるある出来事が、それまでのギャップでかなりハラハラしました。クリスマスにぜひ読みたい作品ですね。
スペイン櫃の秘密
チャールズ・リッチ少佐に招待された、クレイトン夫妻、スペンス夫妻、そしてマクラレン中佐。しかし直前に用事が入り、クレイトン氏はそのパーティに参加できなかった。翌日掃除にやってきた召使のバージェスが見たものは、スペイン櫃の中で刺殺されたクレイトン氏の姿だった…
感想
短い話の中で見事にまとまった好編です。意外な犯人、意外なトリック、意外な真相があります。シェークスピアのオセロの話から、真相が導き出されるという流れもなかなか美しいです。
負け犬
ルーベン・アストウェル卿が殺害され、甥のチャールズ・レバースンが逮捕された。状況は彼に不利だったが、叔母のアストウェル夫人は彼の無実を信じ、秘書のオーエン・トリファシスが犯人と言い張る。しかし、それには全く根拠がなく…
感想
時系列がややこしいので、メモを取りながら読まなくては分からないです。長編でじっくり読みたいような内容でしたが、そうするにはオチがやや弱いかなとも思います。それなりの納得はありましたが、もっとやりようがあったような気もします。
それにしてもタイトルひどすぎない?
二十四羽の黒つぐみ
毎週同じ曜日に料理店に来て、毎週同じものを注文する奇妙な風体の髭の老人。ところがある日いつもと違う曜日に来て、いつもと違うものを注文した。それからしばらくたった時、その老人がその料理店に姿を見せなくなり、ポアロが調べてみると亡くなっていたことがわかり…
感想
面白そうな謎でしたが、真相はなんか普通だったかな、という印象です。料理はおいしそうです。キドニープディングに黒イチゴのタルト。食べてみたいですね。
夢
富豪のベネディクト・ファーリーから呼び出されたポアロ。彼が言うには「自殺をする夢ばかり見るので、そのうち自殺してしまうかもしれない」というもの。話を聞いて相談に乗るが、どうもよくわからないまま、その家を後にする。ところがその一週間後、本当にベネディクト・ファーリーは自殺した…
感想
これは犯人もトリックもわかりました。というか、ヒント出し過ぎじゃないですかね。
グリーンショウ氏の阿房宮
オクスリー夫人は日屋敷の二階で仕事をしていると、庭いじりをしているミス・グリーンショウが、突然誰かに矢で射られて苦しんでいるのを見る。助けに行こうとするが、部屋に鍵がかかっていて閉じ込められており出られない。やがて警察が来てオクスリー夫人は助け出されたが、ミス・グリーンショウは亡くなっていて…
感想
容疑者全員にアリバイがあり、それをどう崩すかという問題。トリックは何か別の短編でも見かけたようなものですが、見事に騙されました。というか、このパターンにいつも引っかかっているような気がするなぁ。
コメント