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招かれざる客-アガサ・クリスティー 感想

4.0
招かれざる客 アガサ・クリスティー

概要とあらすじ

1958年発表の戯曲です。

車の事故により助けを求めてウォリック家を訪れたマイクル・スタークウェッダー。しかし彼が見たものは頭を撃たれて亡くなっているリチャード・ウォリックの姿だった。そしてそのそばには銃を手にして立ちすくむ妻のローラ・ウォリックの姿が…

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みどころ

出だしがいいですね。まるで「ホロー荘の殺人」のようです。ですがそこからローラをかばおうと、ウォリックは偽装工作を始めます。彼らの言動が面白いです。倒叙推理小説の楽しみですね。いつ嘘や作為がばれるのかとドキドキしながら読むことになります。

ところが途中から話がガラッと変わります。倒叙推理小説と思っていたものが、そうではなくなります。この展開は本当に驚きました。そして最後のどんでん返し。

万華鏡のように展開が変わっていきます。いろいろな要素が詰め込まれた贅沢な作品だと思いました。

登場人物

どの登場人物もキャラクターがしっかりしています。なかでもやはりジャン・ウォリックでしょうか。彼が後半、どんどん覚醒(?)していく様子はなかなかに恐ろしいです。

ウォリック夫人もかなりの人物です。結末の解釈によっては、彼女が一番恐ろしいまであります。同様に結末の解釈次第では、登場人物の様相が様変わりするのがこの作品の面白いところでしょう。

犯人とトリック

「招かれざる客」ということで、トリックの一つは想像はつきました。まぁ、そういうことでしょうね、という感じです。ですがそれがメインのトリックなのか、はたまた部品の一つなのかは解釈次第です。

そう考えると、そういういろいろと解釈できるようにしていること自体が、作者の仕掛けたトリックなのではないかとも思えてきますし、事実そうなのでしょう。

すると「トリックの一つは想像がつきました」なんて言っている自分は、作者の手のひらで転がされているようなものなのではないかと思えます。なんとも不思議な作品です。

感想

かなり楽しめました。前半の倒叙推理的な味わいもよかったですし、後半の畳みかけるような展開も素晴らしいです。

言葉で人を操るという行為は、「カリブ海の秘密」でやろうとしていましたが、それほど成功しているとは思えませんでした。そしてそれが「カーテン」では、ある程度成功しているように感じました。そしてこの「招かれざる客」では、その作為がかなり成功しているような気がします。

ただそれすらも、解釈次第では部品の一つですから、本当に贅沢な作品です。

惜しむらくは戯曲という形式ということです。あまりにスピーディに話が流れていきます。もう少しじっくり楽しみたかった感じもあります。これが小説ならもっと楽しめて、もっと高評価をつけられたのではないかとも思うのです。

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