プロローグにおいて「鹿谷門実」なる人物が、登場人物の中の誰なのかという謎が提出されます。これは非常にうまかった。正直、第1章の内容は退屈だったのだが、それによって読み進められたからです。
第2章にはいって「宮垣」の遺書の内容が面白く、興味がそちらにいったのですが、非常にうまい書き出しだったのではないかと思いました。
見事「綾辻行人」の作戦にはまりどんどん読み進めていくことになる。やがて人がいつものようにどんどん死んでいくのですが、書きかけの小説と同じ殺され方をされるにあたってふとひらめく。
書きかけの小説と同じ殺され方をされているのではなく、殺害方法と同じ書きかけの小説を犯人が残していったのではなかろうか?
そういえば第1の殺人でも「怪我の血」を隠すためだとか「鼻血」を隠すためという推理があり、否定されていたが、もう一つ「女性の血」があったよなぁなどと思い浮かぶ。
というか、この本を以前読んだことがあることに、ようやくここで気付きました。しかし、犯人を思い出せません。そのため以前に読んだことがあるにもかかわらず、興味を持ったまま読み進めることが出来ました。
普通の推理小説では「なぜ密室になっていたのか?」が問題になるのに、この「迷路館」では建築家中村青司の作品ということで逆に「なぜ密室ではなかったのか?」ということが問題になっています。普通の推理小説とは、少し違う謎があるところが、特に面白かったです。
やがて明かされる犯人の名前・・・・・・。見事にやられた・・・・・・ああ、そういう落ちだったなぁと、ここでようやく思い出します。しかし、もう少し犯人の描写をきっちりとしてもらえたらなぁと思いました。(まぁ、難しいところでしょうが)
本当に犯人となる人物の印象が薄い。自分の印象では五十歳くらいのおっさんのイメージだったよ。今あらためて登場人物の表を見ると38歳ですか・・・微妙だなぁ。
名前ももうちょっといいのがあるんじゃないかなぁ。例えば「克美」とか、あとは「真澄」だとか。
とかなんとか思いつつ読み進めて最後の数行・・・・・・。またやられてしまいました。「鹿谷門実」とは誰か?そういう謎もあったよね。すっかり記憶から抜けていました。
以前読んでいたにもかかわらずこの謎も解けていませんでした。謎を謎の中に隠すという感じですか。うまいなぁ綾辻行人。
しかし聞くところによると、「時計館の殺人」の方が「推理作家協会賞」をとっているため、「迷路館の殺人」より「時計館の殺人」を先に読んでしまっている人がいるらしい。これは非常にもったいないことだ。
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