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時計館の殺人 感想

3.0
時計館の殺人 綾辻行人

実はこの作品は、以前読んだことがありました。しかし、そのトリックはもちろん、犯人の名前すら覚えていない状況です。なので「迷路館の殺人」のとき同様、楽しめるのではないかと読み始めました。

まず目に留まるのは時計館(旧館)の平面図。これはいい! なにやら非常に想像力をかきたてられます。とくに振り子の部屋というのがおもしろい。この平面図だけで5分くらいは楽しめるのではないでしょうか。

で、プロローグ。おおっ、なつかしの「コナン君」じゃないか。十角館の殺人以来だ!と気分よく読み始めることが出来ました。そういう意味ではこの「時計館」は「迷路館」同様、「十角館」より後に読まなくてはいけない作品でしょう。

しかし、このプロローグにおいて、島田の時計が止まっているという描写を見た瞬間、はるかかなたより記憶がよみがえってきてしまった。

そう、時計館(旧館)の内と外で時間の流れが違っているという、メイントリックのことです。

トリックを思い出したとはいえ、まだ細かいところまでは思い出していません。物語もはじまったばかりだし期待十分だったのですが、残念ながらそのメイントリック抜きでは、あまり楽しむことが出来ませんでした。

犯人である「伊波」が「島田」たちを呼び寄せる流れもどうもぎこちないし、殺人を犯した後、わざわざ「こずえ」の扉をノックし自分の姿を確認させたりと、ありえない描写に違和感が残ります。

そして後半の推理部分・・・・・・特に旧館の内と外との対照表のくだりは、全く頭に入りませんでした。

残念ながら「時計館の殺人」は、メイントリックを思い出してしまった時点で、評価することが出来なくなってしまいました。

とはいえ、かつて読んだ時の記憶をたどってみると、その当時の感想も「ぼちぼちかなぁ」程度だったかと思います。おそらくその原因は、自分の推理小説の読み方にあると思います。

自分は「犯人は誰だろう?」という気持ちはあっても、推理小説を読みながら「犯人を当ててやろう」という気持ちを持つことがほとんどありません。

「水車館の殺人」のときはその読み方がうまくはまり、きれいにだまされて、面白く読めました。しかし、「時計館の殺人」に関してはその逆でした。

「時計館の殺人」は作者と読者の推理ゲームです。読む人は真剣に犯人を当てるつもりで読まなくてはなりません。旧館の内と外との「対照表」も読者の方で作って、真剣に犯人のアリバイを探らなくてはなりません。

逆に言えばそこまで真剣にやってかつ、メイントリックが見抜けなかったなら、最後の推理部分にカタルシスを味わうことができただろうと思います。

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