概要
1920年のアガサ・クリスティの処女作。ポアロ長編33作中1作目です。
1916年にアガサ・クリスティはこの作品を完成させましたが、出版社からは何度も断られました。その存在をクリスティーが忘れかけていた1920年に、ボドリー・ヘッド社から連絡があり、若干の修正を経て出版されました。
個人的評価
あらすじ
スタイルズ荘の女主人エミリイが発作を起こして死んでしまう。どうやら毒殺されたらしい。再婚相手の若い男である、夫のアルフレッドに不利な証拠が次々と出てくるが、果たして本当に彼がそんなことをしたのだろうか? ポアロが調査に乗り出す…
みどころ
あまり期待せずに読み始めましたが、面白かったです。推理小説のいいところ詰め合わせ欲張りセットという感じ。密室、暗号(?)、入れ替わり、アリバイなどなど、様々な趣向が盛りだくさんです。そしてそれらが無理ない形で展開されています。
また、ポアロのわけのわからない質問や、わけのわからない行動に振り回されるヘイスティングズが面白いです。
昔はすごかったけれど、もう耄碌してしまったのではないか…と思っていたら、それらが事件の真相に絡んでくる。やはりポアロはすごい…と思っていたら、またおかしなことを言いだすので…とヘイスティングズのポアロに対する評価がくるくる入れ替わります。
シャーロックホームズとワトソンといった、名探偵とその助手という関係のまさに典型という感じ。お手本のような本格推理小説の味わいです。
登場人物について
- エミリイ・イングルソープ(スタイルズ荘の女主人)
- アルフレッド・イングルソープ(エミリイの夫)
- ジョン・カヴェンディッシュ(エミリイの義理の息子)
- メリィ・カヴェンディッシュ(ジョンの妻)
- ローレンス・カヴェンディッシュ(ジョンの弟)
- イヴリン・ハワード(エミリイの相談相手)
- シンシア・マードック(エミリイの旧友の娘・薬剤師)
- ドーカス(召使)
- マニング(庭師)
- ウィルキンズ(主治医)
- バウエルスタイン博士(毒物学者)
- アルバート・メイス(薬屋の店員)
登場人物ではヘイスティングズが面白いです。素直でお人よしだが、ちょっと抜けているという感じがとてもいいです。
その他の登場人物も、ヘイスティングズの目を通して語られるので、ちょっとした偏見や先入観も込みで面白く描かれます。エミリとシンシアの二人の女性もいいですね。

犯人とトリック
犯人は意外な人物でした。トリックやそれが崩れていく様もなかなか楽しめます。細かい謎が途中途中で明かされますので、あまり中だるみすることなく読み進めることができました。
ヘイスティングズのなんでもない一言が、事件を解くカギになっている展開が素晴らしいですね。あとは犯人が暴かれる瞬間の描写は、定番ですが好きです。
感想
「スタイルズ荘の怪事件」では、登場人物の描写はあっさりしていて、その分ポアロとヘイスティングズのやり取りに比重が置かれています。
登場人物に深みがあって、その登場人物たちが織り成すドラマが事件に絡んで、強い感動をもたらす、といった他の作品にあるような展開はありません。
登場人物の描写があっさりしているので、犯人に対する「怖さ」や「哀れみ」など、他のクリスティー作品では感じる部分が薄いのですが、その分ポアロとヘイスティングズのキャラが立っている作品です。
これはヘイスティングズ視点で書かれていることも大きいと思います。そしてむしろデビュー作としてはこの形式で良かったとも思います。
クリスティの作品としては「アクロイド殺し」の方が有名で、先にそちらを読んでしまう人が多いと思いますが、順番としてはこの「スタイルズ荘の怪事件」を先に読むべきですね。
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