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アガサ・クリスティー自伝

アガサ・クリスティー

1950年60歳に執筆をはじめ、1965年75歳に書きあげられた「自伝」です。アガサ・クリスティーの死後、1977年に出版されました。

アガサ・クリスティー自伝(上)

上巻はクリスティーの幼少期から、アーチボルトと結婚し、世界旅行に出かける直前までです。

幼少期の話は少々退屈ではありますが、それはそれで心地よいです。自伝という堅苦しいものではなく、緩いエッセイという感じです。父親たちとピクニックに出かけるも、機嫌を損ねて帰ってきて、その原因を母親だけが分かってくれたというエピソードが印象に残りました。まさに小さな親切、大きなお世話というやつでしょうか。

クリスティーが大きくなり、社交界デビューする辺りからは、恋愛小説の趣も感じます。おとなしい顔をして、なかなかやるねぇという感じです。アーチボルトと結ばれるまでは、かなり紆余曲折あって面白いです。

そしてなによりも「スタイルズ荘の怪事件」に関するエピソードがいいですね。ポアロやその他の登場人物たちが形作られる様子は、舞台裏をのぞき見する感じでとてもうれしいです。

アガサ・クリスティー自伝(下)

下巻は世界一周旅行に始まり、二つの世界大戦、そして75歳になった自分を顧みて終わります。

世界旅行の様子は、「茶色の服の男」に活かされています。先に「茶色の服の男」を読んでいると、ニヤリとできる出来事があります。アーチボルトとの離婚に至る流れは、自伝を読む限りでは、結構唐突だったのでしょうかね。この辺の心情は、自伝よりも「未完の肖像」の方が詳しいと思います。

マックスと出会ってからは中東関係が多めで、「さあ、あなたの暮らしぶりを話して」と被ります。それなりに面白いのですが、これなら「さあ、あなたの暮らしぶりを話して」を読んでいればいいです。自伝に期待しているのは、そういうことではないんですよね。こういうところから、あの作品の構想を思いついた、みたいなエピソードがもっと欲しい。

アガサ・クリスティーは、あまり考え方に偏りがない人だと思います。そんな彼女が世界大戦がはじまるときに感じた思いというのは、貴重な証言だと思います。戦争なんて起こるとは思っていなかったのです。それが何か揉め事が起こってしまった。すぐ終わるだろうとのんきに構えていたら、あれよあれよという間に、大変なことになっていき、何も知らない市民たちが巻き込まれていく。

「世界大戦なんて、今の時代に起こるわけがない」と私たちは考えがちです。ですが、それは当時のアガサ・クリスティーも同様だったのです。戦争のない世界というのは、とても危ういバランスで成り立っているのだと、気づかされます。

まとめ

自作品に触れているところもありますが、それほど多くはない印象です。もっと裏話を聞きたかったので、その点は少し残念です。

「アガサ・クリスティー自伝」に手を出すような人は、おそらく彼女の作品をほとんど読んで、作者であるアガサ・クリスティー自身に興味が出てきた人でしょう。ですが、そんな人なら、ウィキペディアで彼女のことを調べたり、彼女について書かれた本をすでに読んでいるかもしれません。

彼女の人生で作品に関することが知りたいなら、そちらの方が有用かもしれません。正直「アガサ・クリスティー自伝」は散漫で冗長です。あまり興味が持てないところにも、筆が尽くされてしまっています。

とはいえ個人的にはいろいろ気づくこともあり、付箋も多くつけることになりました。特に「メソポタミアの殺人」の被害者のモデルとなった人の話は、面白かったです。小説内ではそれほどまでの印象はありませんでしたが、この自伝でクリスティーが描きたかった人物像を補完できた気がします。それだけでもこの自伝を読んでよかったなぁ、と思いました。

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