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【感想】「メソポタミヤの殺人」-遺跡調査隊宿舎での密室殺人にポアロが挑む!

4.5
メソポタミヤの殺人 アガサ・クリスティー

概要

1936年のポアロ長編33作中12作目。

アーチボルトとの離婚後、傷心の旅に出たアガサ・クリスティーは、イラク南部の荒涼とした砂漠、ウルの遺跡を訪れます。そこで出会った人たち、とりわけ発掘隊長の妻であるキャサリン・ウーリーに刺激を受け、彼女を今作「メソポタミアの殺人」の登場人物の一人のモデルとしています。

個人的評価

あらすじ

考古学者エリック・レイドナーと結婚したルイズは、死んだはずの先夫から脅迫状を受けとり、恐怖におびえ幻影を見るようになる。エリックはルイズを心配して看護婦を雇い、状況が少し落ち着いたと思っていたのだが…

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中東の風景描写

中東の描写がいいです。道路が悪く、めちゃくちゃ車が揺れるところや、異様な悪臭がした町並みの様子なんかは、ユーモアあふれて面白いです。

屋上から見る夕日や、川沿いの風景、遺跡の発掘場で働く人たちの様子が、生き生きと描かれています。実際にクリスティーが、夫の採掘現場について行って、その様子を見てきたからこその描写ですね。

レザラン看護婦ではないですが、中東に行ってみたい感じを受けます。

登場人物

  • エイミー・レザラン(看護婦)
  • エリック・レイドナー(遺跡調査隊長)
  • ルイズ・レイドナー(エリックの妻)
  • リチャード・ケアリー(遺跡調査隊員)
  • ディヴィッド・エモット(遺跡調査隊員)
  • ウイリアム・コールマン(遺跡調査隊員)
  • カール・ライター(遺跡調査隊員)
  • ラヴィニ神父(遺跡調査隊員)
  • アン・ジョンソン(遺跡調査隊員)
  • ジョーゼフ・マーカド(遺跡調査隊員)
  • マリー・マーカド(ジョーゼフの妻)
  • レイリー先生(外科医)
  • シェイラ・レイリー(レイリーの妻)
  • アブダラ(土器洗いの少年)

看護婦のレザランがいいです。一癖も二癖もある登場人物の中、常識的な人物として書かれています。ですが、ところどころにある毒を含んだ発言が面白いです。盗み聞きをするときの、長々しい言い訳もよかったですね。

登場人物が多く、最初はとっつきづらい感じがありますが、レザランがいろいろな人と話をする中で、それぞれの特徴が見えてきて、区別がつくようになってきます。宿舎の設計図と行ったり来たりしながら、ゆっくり読み進めるのがいいでしょう。

ルイズの悪口を女性陣が言うところが、なかなか陰険な感じがあって面白いです。特にシェイラがすごいです。あそこまで言われると、逆にすっきりです。

男性陣ではコールマンがいいですね。あのアホっぽいところと、最後に花を持ってくるところのギャップがにくいです。レザランではないですが、評価が大きく変わりました。

トリックについて

トリックに関しては、納得感があります。犯人側の作為がちゃんとあり、実際にうまくいくかどうかは置いておいて、理屈がしっかりとしているのはいいです。

犯人自体は、確かに意外な人物ですが、それほど驚きはありませんでした。それよりも、

犯人の正体が、ルイズの先夫、フレデリック・ボスナーだと

わかった時の方が驚きがありました。そしてそれによって、脅迫状が届いたり、届かなかったりした謎が明かされるところがいいです。パズルのピースがきちっとはまる感覚です。

作品ごとのつながり

ポアロはこの後シリアに戻り、一週間ほどしてオリエンタル・エキスプレスで、家に帰るそうです。つまりこの後「オリエント急行の殺人」に出くわすということですね。

そういう作品ごとのつながりも面白いです。

感想

登場人物が多く、部屋の位置関係が大切なので、宿舎の設計図で人物や位置を確かめながら、読み進めることになります。その宿舎の設計図が、物語に挟まっているのが、少し不便だったかな。

ルイズの人間性がきっちり描かれているかと言うと、そうでもない感じがします。もっと自分勝手な面が描かれていたら、また見え方も変わって、物語に深みが増したように思います。不満としてはそれくらいです。

全体として、隙のない作品だったと思います。伏線がすべて回収されて、すっきりしました。

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