概要とあらすじ
1934年のポアロ長編33作中9作目。
元俳優のチャールズ・カートライトが主催するパーティーで、牧師のバビントンがマティーニを飲んで死んだ。そして数か月後、医師のバーソロミュー・ストレンジのパーティーで、同じような出席者が集まる中、バーソロミュー自身がワインを口にして死んだ。この二つの事件に何か関係があるのだろうか…
みどころ
元俳優のチャールズ・カートライトと、若く元気なエッグの年の差三十歳という恋愛要素が楽しいです。エッグのぐいぐいくる感じと、それにやや押され気味なチャールズ。そしてそれを温かく見守るサタースウェイト。殺人事件が起こっているのに、なんというかほんわかした雰囲気です。
「この事件を解決したら、告白するんだ」みたいなノリが微笑ましいです。五十にもなるおっさんとしては、少々痛々しいともおもいますが…
ポアロが邪魔者になっているのも面白いです。エッグがあからさまに仲間にするのを嫌がっているけれど、そんなことは言えない。その様子を興味深く見るサタースウェイトの描写もいい。
登場人物について
エッグに魅力があります。クリスティーはこういう女の子を描かせたら上手いです。もっとエッグがいろいろなところを嗅ぎまわる展開にしてくれたら、うれしいとも思ったのですが、展開上チャールズとサタースウェイトとで、三分割にならざるを得ないのは仕方がないですね。「三幕」の殺人ですから。
サタースウェイトは「謎のクィン氏」に出てくる登場人物です。本作よりも先にそちらを読んでおくと、サタースウェイトのキャラクターがつかめて、読みやすくなるかと思います。というか、読んでおくべきです。
最初のバビントン牧師の殺害場面では、登場人物があふれかえっていて、誰が誰なのか分かりません。ですが、そこは別に気にしなくてもよいです。後半で一人一人を掘り下げていく、親切設計になっています。これはありがたいです。
感想
トリックも意外な犯人も素晴らしかったです。しかし、チャールズとサタースウェイトの二人が調査をしている前半部分に、中だるみ感があったかな。
二人がなんか似た者同士なんですよね。ポアロとヘイスティングズみたいな、掛け合いの面白さがありませんでした。
というのが、最初に読んだ印象でしたが、「謎のクィン氏」を読んだ後で再読すると、また感じが変わります。サタースウェイトの脇役キャラを踏まえて読むと、主役属性のチャールズとの比較で、彼らのやりとりもなかなか面白く感じられました。
そして、全てを読んだうえでもう一度振り返ると、毎度のことながらそこにはクリスティーの仕掛けが散りばめられています。この作品は犯人がわかったうえで読む、二度目こそおもしろい作品の一つだと思います。
終盤にあるチャールズとエッグの、墓地でのやりとりはとても面白かった。あそこはこの小説屈指の名場面ですね。それだけに結末が悲しすぎる。
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